フリーは10月10日、同社が手掛ける人事労務管理を効率化するクラウドサービス「freee人事労務」の新ビジョンを発表した。併せて、新たに展開する4つの事業領域と5つの新サービスを発表。正社員だけでなくすべての雇用形態の従業員に対して、だれもが自分らしく活躍できる環境づくりを目指す。
同日の記者発表会に登壇した常務執行役員 従業員プロダクトCEOの髙村大器氏は「freee人事労務はサービス提供開始から今年で10周年を迎えた。これまでは誰でも圧倒的に効率化できる人事労務DXに注力してきたが、これからは人と組織の可能性を引き出す『ピープル・エンパワーメント』の実現に力を注いでいきたい」と述べた。
10周年を迎えた「freee人事労務」
フリーは2014年にfreee人事労務の提供を開始した。日本初となった電子政府の総合窓口「e-Gov API」への対応や、給与ソフト初となった法定三帳簿への対応、クラウドサービス初となった給与・人事・労務への一気通貫対応など、同サービスはスモールビジネスのクラウド化と業務効率化をリードしてきた。
また、「Slack」や「LINE」などさまざまなアプリとも連携し、スマホでもさまざまな業種や働き方に対応できるようになっている。さらに、2014年~2024年までにfreee人事労務で支給された給与の総額は6.5兆円に上るという。
「プロダクトの年間アップデート数のうち40%以上は顧客の声から実現している。これまでも、これからも顧客と一緒に成長していく」(髙村氏)
新ビジョンは「ピープル・エンパワーメント」
freee人事労務の新ビジョンは「ピープル・エンパワーメント」。ピープル・エンパワーメントとは、人と組織の可能性を引き出すことを意味しており、freee人事労務は正社員だけでなくすべての雇用形態の従業員に対して、だれもが自分らしく活躍できる環境作りを目指すとしている。
髙村氏によると、多くの中小企業では、ピープル・エンパワーメントの取り組みが十分ではないという。フリーの調査によると、人材定着や人材育成、業務効率化に取り組めていると回答した中小企業はいずれも3割以下だ。そして人事企画に取り組めていない理由として一番多かったのが「人員とノウハウの不足」だ。
「これまでの10年では『人事労務』を簡単にしてきた。次の10年では『エンパワーメント』を簡単にしていく。より多くの会社がエンパワーメントに取り組めるように向き合っていきたい」と髙村氏は意気込んだ。
freeeが新たに4つの事業領域に進出
フリーは、新ビジョンの達成に向け、既存領域である「人事労務DX」に加え、4つの事業領域「ウェルネス」「人材マッチング」「成長支援」「従業員DX」へ新たに進出する。
既存領域である人事労務DXでは、エンパワーメントの土台として今後も継続的に機能強化を行っていく。顧客からの要望が特に多かった機能「統合カスタム権限」は今後提供される予定だ。
ウェルネス領域では、従業員の健康と待遇の改善を支援するサービスを提供する。フリーは10月2日、日常の出費を補助するクーポンやギフトが受け取れる「freee福利厚生 ベネフィットサービス」の提供を開始。「スモールビジネス各社をもっと選ばれる会社にしていきたい」(髙村氏)
人材マッチング領域では、中小・中堅企業が抱える人手不足の解決を支援するサービスを展開する。今後提供する具体的なサービスは決まっていないが、エンジニアやデザイナーの業務委託やスポットバイトといった「正社員以外も活躍しやすい環境作りから始める」という(髙村氏)。
成長支援領域では、人材情報の見える化を実現し、人が成長しやすい環境づくりを支援する。今後提供開始予定の機能「統合人事レポート(仮)」では、freee人事労務で蓄積されたデータを活用し、組織のマネジメントに生かすことができる。
そして従業員DX領域では、デジタル技術を活用し従業員にまつわる業務を効率化するサービスを展開する。10月10日に提供を開始した「freee人事労務 AIシフト管理β版」は、AIが従業員のスキルや経験を考慮して自動でシフトを作成するサービス。
従業員の勤務パターンを登録して希望シフトをアプリで回収すると、AIがシフトを自動で作成。また、登録されたシフトはfreee人事労務に自動で連携されるため、重複管理は不要だ。
同サービスを先行導入した医療法人の慈正会では、約8時間かかっていたシフト作成作業 を約5分に短縮できたという。また、シフトが人間の主観ではなくなるため、従業員からの平等性への不満の声が少なくなることも期待できるという。
また従業員DX領域では、従業員のあらゆる情報を一つに集約する機能「従業員ポータル」も今後提供する予定。
髙村氏は、「一つひとつの独立したサービスが統合されることに大きな意味がある。ピープル・エンパワーメントは、スモールビジネスには欠かせない考え方だ。新たな事業を通じて、顧客とともにこれらのビジョンの達成につなげていきたい」と強調した。