経済産業省と文部科学省は8月、博士号を取得した専門人材の就職支援の在り方について議論する有識者検討会を新たに立ち上げ、初会合を開いた。日本企業での博士人材の活用が十分に進んでいない状況にある中、企業が採用しやすくなるような環境整備などの議論を行い、来年3月までに企業や大学向けの手引を策定する。
検討会は日立製作所やサイバーエージェントなど、企業の人事担当者や大学関係者らで構成され、委員長には新潟大の川端和重副学長が就任。
月1回程度開催し、積極的に博士人材を採用する企業の取り組みなどについて聞き取りをした上で、企業や大学として取り組むべき事項を議論し、取りまとめを行う。
検討会設置の背景にあるのは、イノベーションの担い手として期待される博士人材の活用が企業で十分進んでいないことや、活躍できる場が限定的となっている博士課程に進学する魅力が薄れ、入学者数が減少傾向にあるといった課題がある。
文科省の調査では、人口100万人当たりの博士号取得者数は海外と比べると少なく、韓国の344人、米国の286人に対し、日本は126人にとどまる。就職への不安などが博士課程への進学をためらう理由になっていると考えられる。
企業の博士人材の採用も十分とは言えない。経産省の調査では2020年時点で人材を採っていない企業は76.6%に上った。このうち35.6%の企業が「博士人材を採用したくてもできていない」と回答しており、ニーズはあるものの、企業側と人材のマッチングがうまくいっていない課題がある。
課題を解消し、博士人材の活用を促進するため、政府は今後策定する手引に博士人材の入社後の配置や研究実績に見合った賃金例などを盛り込むことを検討。就職のルートを増やすことで、修士課程修了者から博士課程への進学割合を高める循環につなげたい考えだ。