テラスカイは10月3日、都内で年次カンファレンス「TerraSkyDay 2024」を開催した。会場には約2100人が来場、本稿では同社 代表取締役 CEO 社長執行役員の佐藤秀哉氏によるキーのーを紹介する。

アクセンチュアを抜いてSalesforceの認定資格者数は国内トップに

佐藤氏は登壇するなり「当社は2006年に創業し、テラスカイの歴史はクラウドの歴史だ」と宣言し、現在のグループ会社は13社を数え、うち3社が上場している。テラスカイ本体は2015年に旧東証マザーズ(現・東証グロース市場)、2019年に旧東証一部(現・プライム市場)にそれぞれ上場し、2024年にプライム市場に移行した。2025年の売上高は240億円を計画している。

  • テラスカイ 代表取締役 CEO 社長執行役員の佐藤秀哉氏

    テラスカイ 代表取締役 CEO 社長執行役員の佐藤秀哉氏

テラスカイと言えば国内屈指のSalesforce(セールスフォース)のインテグレーターと言っても過言ではないだろう。

それを示すように、国内ではテラスカイとNTTデータのみがSalesforceの最上位パートナー「SUMMIT」となっている。ただ、Salesforceだけではない。グループ会社のBeeXはAWS(Amazon Web Service)のプレミアティアサービスパートナー、Google Cloudのプレミアパートナー、Microsoft Azureのソリューションパートナー、SAPのシルバーパートナーだ。

  • テラスカイがパートナーに認定されている各クラウドサービス

    テラスカイがパートナーに認定されている各クラウドサービス

また、同社のエンジニアは各サービスの資格を多く保有し、Salesforceに限れば今年4月にアクセンチュアを抜いて日本で1番多くの資格を保有している企業となった。

  • アクセンチュアを抜いてSalesforceの認定資格者数は国内トップとなった

    アクセンチュアを抜いてSalesforceの認定資格者数は国内トップとなった

創業時は5人でスタートした同社だが、現在の従業員数は1600人以上となり、これまでの変遷を佐藤氏は振り返っていた。そして、同氏は「現在地としては4つのクラウドをワンストップで提供できることを目指して会社を作ってきた」と述べている。

テラスカイの知見を広く届けるためにNTTデータと資本業務提携

Salesforceをフックにインテグレーターとしての道のりを歩み始めた同社だが、2008年にAWSの日本法人が設立されたことを機に、2013年にグループ会社のBeeXを立ち上げた。佐藤氏は、IaaS(Infrastructure as a Service)は運用監視が必要になるため、サーバーワークスとインフラを運用監視する企業としてSky 365を2014年に設立した。

さらに、Salesforceがマーケティングオートメーションに注力する動きに追随する形で、Ruby on RailsによるWebシステム開発のCuon(クオン)を買収し、2022年にデジタルマーケティングを専業とするDiceWorks(ダイスワークス)を設立。

佐藤氏は「DiceWorksを設立する際に、なぜマーケティングをやるのかを考えた。一般的にWebサイトやモバイルアプリ、CRM(顧客関係管理)など、別々に構築している傾向があり、そうなると連携や効率性に難がある。そのため、全体最適のマーケティングをワンストップで提供する体制の会社にした」と話す。

他方、ベンチャーキャピタル(VC)にも力を入れており、2018年にクラウド関連分野においてスタートアップ企業を中心に投資を行うハンズオン型VCのテラスカイベンチャーズを設立。同氏は「きっかけとしてはサーバーワークスさんが大きい。2013年に資本業務提携し、2019年に東証マザーズに上場した。育てて上場させていくことがマーケットへのメッセージになり、社員の方もやりがいが出て成長できると確信した」という。

2020年にテラスカイベンチャーズが運営するTSV1号投資事業有限組合の投資先であるrakumoがマザーズ市場(現・グロース市場)、2022年にはグループ会社のキットアライブが札幌証券取引所アンビシャス市場に上場、2024年8月にrakumoと同じ投資先だったオプロがグロース市場に上場した。

このように同社では、さまざまな取り組みをこれまで進めてきたが、今年4月に同社はNTTデータとの資本業務提携という大きな決断する。

  • 左から佐藤氏、NTTデータグループ 代表取締役社長の佐々木裕氏

    左から佐藤氏、NTTデータグループ 代表取締役社長の佐々木裕氏

同氏は「成長しており、現在でも銀行からの借り入れもないことから、お金のためではない。当社の知見を多くの企業に届けたいという想いがあるものの、当社だけでは難しい側面がある。そのため、NTTデータさんとの提携に踏み切った」と振り返る。

テラスカイと顧客接点の変革を推進するNTTデータ

そして、佐藤氏が促す形でNTTデータグループ 代表取締役社長の佐々木裕氏が登壇した。同氏は「社長に就任したタイミングでITで日本を元気しようということを掲げてきた。この10年ほどでDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展し、企業の中のあらゆる業務にITが役立つ時代になってきた。特に、テラスカイさんと取り組みたい領域は顧客接点の変革を進めていきたいと考えている」と力を込める。

  • 佐々木氏

    佐々木氏

同氏によると、いかに効率的に顧客との接点を設計していくかが重要なものになっているという。そこで、同社は戦略として「お客さまのWhat=経営アジェンダを基点に変革に伴走」を軸に据えている。

佐々木氏は「ややもすると私たちITベンダーはプロダクトや箱モノ、サービスを売るが、やはり解決しなければならないのはお客さまの経営課題。お客さまの成果を実現するためには納得のいく提言が必要であり、当社はコンサルティング力の強化とともにデジタル競争力の強化を図っている。そして、提言をしたところで実装できなければ成果は出ないため優れた実装能力、エンジニアリング力を備えておく必要がある」と説く。

続けて、同氏は「日本は品質要求水準が高い国のため、当社としても世界最強レベルのシステム構築力、運用力を目指して取り組んできた。また、実装と言ってもスクラッチでゼロからから作るのではなく、アセットを活用しながら価値を提供していけば納期も短くなるし、コストも低減できる。そのアセットの1つがSalesforceだ。そうしことから、顧客接点の変革はテラスカイさんの力を借りながらコラボレーションを進めていきたい」と決意を述べていた。

同氏によると、テラスカイとの協業では営業・マーケティングの高度化、顧客チャネル強化、顧客エンゲージメント強化、ブランド・クリエイティブに取り組む。

具体的には「特定インダストリーに絞った共同サービス企画」「生成AIを活用した新たなサービス企画」「国内におけるSalesforce人材の獲得と育成」「APACを中心としたグローバル展開」の4つのビジネステーマを定めている。

  • NTTデータとテラスカイのビジネステーマ

    NTTデータとテラスカイのビジネステーマ

特に佐々木氏はインダストリーに絞った共同企画について同社の顧客基盤を活かし、まずはファーストステップとしてSalesforceを中核とした地域金融機関向けのCX(顧客体験)変革ソリューションを提供している点を強調した。

  • 地域金融機関向けのCX(顧客体験)変革ソリューションの概要

    地域金融機関向けのCX(顧客体験)変革ソリューションの概要

同氏は「金融分野での信頼と実績は強いものがある。今後、金融機関のみならず公共や民間企業にも提供範囲を拡大していく」と述べ、講演を締めくくった。