【農林水産省】今年の新米は順調、それでも「令和の米騒動」

農林水産省は8月30日、令和6年産の米の作柄概況(8月15日現在)を発表した。

 ほとんどの都道府県で平年並み以上となり、米の生育は順調だ。それでも、8月のお盆過ぎから米の品薄感が強まり、農水省は国民に冷静な対応を求めるよう「あの手この手」を繰り出している。

 発表した作柄概況(沖縄をのぞく46都道府県)によると、青森が「良」で、北海道など11の道府県が「やや良」、31の都府県が「平年並み」だった。昨年同時期の発表では、「良」がゼロで、「やや良」が5道県。今年は昨年よりも豊作だ。

 農水省はこの作柄概況を使い、米不足の沈静化をはかった。「今年の生育は順調で、まもなく新米が店頭にならぶ」と強調。買いだめをやめてもらおうと、ホームページで卸売業者や農協に出した米の流通の促進を求める要請書をアップしたほか、米の流通に関する情報を随時、提供した。

 9月には農水省のYouTubeチャンネル『BUZZ MAFF(ばずまふ)』を使い、滋賀、高知、新潟での稲刈りの様子を動画で紹介。米の収穫が順調に進んでいることをアピールしたが、9月上旬まで品薄感は続いた。

 もともと8月は在庫が少なくなる。昨年の猛暑で米の品質が低下し、外食需要も増えた。こんな品薄状態に、南海トラフ地震の臨時情報が出されたことが大きく影響した。卸売業者やスーパーには例年と同じくらいの米を出しているというが、置くとすぐに売り切れる状態が続いたようだ。

 坂本哲志農水相は9月6日の会見で「消費者の方に向けて、きめ細やかな情報発信を積極的に行っていきたい」と述べ、重ねて米の円滑な流通を促す考えを示した。

 今回の米不足は、「令和の米騒動」とも言われるが、別の懸念も出てきた。「9月から10月にかけて本格的に新米が出回る。この時、買いだめした消費者が新米を買わなくなるのでは」(農水省幹部)という。

 米の消費が減る中、需給バランスをとることは簡単ではなさそうだ。

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