梶原浩規・NCホールディングス社長の「人生の転機」【不当支配からの独立勝ち取った株主総会】

創業77年の当社は、大型ベルトコンベヤの老舗で、日本の重厚長大産業を長く支えてきました。当社のコンベヤは製鉄所や火力発電所、石灰石の採掘現場などで重量物を運び、長さ、高低差やカーブなどにも対応でき、50年間止まらず動く技術の高さが強みです。

 このほか立体駐車場装置、近年は災害時のがれき撤去や、ダム浚渫、河川改良などの土木工事にノウハウを生かすフリーラインコンベヤを推進。土木工事で搬送の主役だったトラック運送がドライバーの高齢化や物流の2024年問題、世界的潮流であるカーボンニュートラルの影響を受けるなか、コンベヤが代替する新しい流れも出ています。

 私は旧三和銀行を経て、企業立て直しなどを手掛けていましたが、2017年から当社の経営に携わり、18年6月に社長になりました。

 転機は21年6月22日の株主総会です。私を社長にした当社の大株主で、グループ企業の会長が18年に亡くなった後、会長へのご恩返しにと18年3月期に2億9000万円の赤字だった業績を急速に回復させ、就任3期目の21年3月期には創業以来の最高益10億円超を達成しました。

 この間、会長亡きあとの大株主が、当社従業員のやる気を削ぐような不当な経営介入を行ってきました。私たちはそれとは真逆のやり方で会社の独立性、経営再生、従業員の利益を守ることに努めたのです。しかし、それを快く思わない大株主は、株主総会前に突然の社長交代を要求し、取締役7人の入れ替えを求める株主提案を行ってきました。

 大株主は取引先から受け入れた役職者らを大量に送り込み、当社を「植民地」化しようとしていました。そうなっては従業員に申し訳ないと、徹底抗戦することを決心。従業員、労働組合も会社を支持。さらに一般株主を死ぬ気で回り、行使比率も前年の60%から80%以上に上昇。一般株主が経営陣の手腕を評価して継続を選んでくれたのです。その後、大株主の株式買い取りに成功し、不当支配からの独立を果たすこともできたのです。

 この転機で学んだのは、筋を曲げないことの大切さ、また会社はだれの物かということ。私は従業員を一番大事にしないといけないと思っています。従業員、その家族を入れて2000人を決して不幸にしないと改めて決意しました。

 独立を勝ち取ってこの3年、その後、ファンドも入ってきて結構なプレッシャーもありました。今年7月に米投資会社MIRIグループによる当社の公開買付け(TOB)が成立しました。今後、上場廃止の方向で進みますが、一度非上場化して再構築する。社員のやる気を喚起して、前を向いてもらう。そして安心して仕事ができる体制にしていきたいと思っています。