ベインキャピタルが富士ソフトに買収提案、KKRに対抗

大手ファンド同士が競合

 独自の技術を持つシステム会社を、米大手ファンドが奪い合う展開に─。

 2024年9月3日、米大手投資ファンドのベインキャピタルが、準大手システム開発会社・富士ソフト(坂下智保社長)に対して買収を提案したと発表した。約6000億円を投じて、TOB(株式公開買い付け)を行うというもの。すでに資産査定に入っており、10月にも正式提案をしたいとしている。

 富士ソフトに対しては、やはり米大手投資ファンドのKKRが買収を提案し、8月8日には富士ソフトの賛同の元、株式非公開化を行うとしていた。金額は約5600億円。ベインの提案は、この金額を上回る。

 KKRは、当初は9月中旬にTOBを開始、12月頃には臨時株主総会を開催して非上場化というスケジュールを想定していたが、9月5日開始に早める。ベインが名乗りを上げる中、このTOBが成立するかどうかは不透明。

 なぜ、こういう事態になっているのか。

 経緯を振り返ると、富士ソフトに対しては22年頃から、シンガポールの投資会社・3Dインベストメント・パートナーズが株式を買い増し、経営体制の変更や不動産などの資産効率化に向け、圧力を強めていた。現在、3Dは富士ソフトの筆頭株主。

 非上場化も、3Dの提案によるもので、富士ソフトは社外取締役を中心に検討。結果、大株主への対応に時間を取られずに企業としての成長を追求できるということで非上場化を決断。

 ベインの発表によれば、同社は24年7月に、今回と同様の約6000億円での買収を提案していた。ただ、その際は3Dが主導する買収者の選考だったこともあり、ベインは正式には参加しなかった。しかし、KKRがベインよりも安い価格での提案で選ばれたことから、改めて名乗りを上げた形。

 近年、海外投資ファンドが日本企業を買収する場合、その企業の賛同を前提とした友好的なケースが多いが、今回は大手ファンド同士の争奪戦。

 今後ベインが正式な提案をすれば、富士ソフトも「KKRからの提案との比較も含めて慎重に検討を行う予定」としている。

 突如、買収提案が出される時代、企業はどう対応していくか。