アリババクラウドは9月20日(中国現地時間)、年次イベント「Apsara Conference 2024」において、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)およびITインフラにおける、顧客とパートナーの支援について発表した。
NVIDIAらと開発したLLMでモビリティとスマートコックピットを支援
アリババクラウドはNVIDIAおよびアリババグループのBanmaと共同開発した、自動車アプリケーション向けに設計された大型マルチモーダルLMMソリューションについて発表した。今後このソリューションは中国の自動車メーカー向けに提供され、自動車所有者に対するインタラクティブな体験の提供や、スマートモビリティの新たな価値創造を支援するという。
今回の提携により、アリババクラウド独自のLLM「Qwen」シリーズ(Qwen2-7B言語モデルおよびQwen2-VLビジョン言語モデルを含む)が、自動運転車向けの「NVIDIA DRIVE AGX Orin」プラットフォームにシームレスに統合される。
さらに、NVIDIAのモデルアクセラレーション技術を活用することで、計算コストを削減するとともに、アリババクラウドのモデルの複雑なタスクの処理待ち時間を最小限に抑えている。ドライバーや同乗者にスムーズで途切れのないインテリジェントな体験が提供するという。
車載音声アシスタントは複雑な問い合わせへの対応やビジュアルインテリジェンスの処理が可能となり、ダイナミックで継続的な会話を行うだけでなく、近くのランドマークに関する情報提供や、雪の日にヘッドライトの点灯を促すといった提案も可能とのことだ。
XPENGとの提携でスマートコックピット体験を強化
中国の大手スマート電気自動車メーカーであるXPENG(小鵬汽車:シャオペン)はアリババクラウドのAIモデルとクラウドコンピューティング機能を活用し、スマートコックピットと自律運転体験の開発を強化する。
XPENGはQwenを使用してAI音声アシスタント「Xiao P」を強化し、より優れたスマートコックピット体験の提供を目指す。LLMを搭載した音声アシスタントは複雑な会話の文脈やユーザーの意図を理解する能力を持ち、ドライバーや乗客との自然で直感的な対話を実現するという。例えば、ユーザーが「車内が寒い」と言うと、音声アシスタントは自動的に車内の温度を調整するといったことが可能。
また、XPENGはスマートコックピット以外にもアリババクラウドと協力してさまざまなLLMを統合している。ユーザーはXPENGのモバイルアプリ内で、テキストから画像を生成する「Tongyi Wanxiang」を活用し、車両の外装に使えるカスタムステッカーをデザインできる。
さらに、XPENGはQwenを活用したAIコーディングアシスタント「Tongyi Lingma」を使用して、自動車技術の研究開発効率を向上させる取り組みも進めているそうだ。アリババクラウドはXPENGにコンピューティングリソースを提供し、自律運転向けLLMのトレーニングを支援しているという。
miHoYoの没入型かつスケーラブルなゲーム体験を実現
アリババクラウドはmiHoYoの最新ゲーム「ZenlessZoneZero」(ゼンレスゾーンゼロ)のローンチに向け、クラウドインフラを提供したことを公表した。都市型ファンタジーアクションRPGであるこの新作は、事前ベータ登録数が5000万件近くに達するなど、システムの安定性や予約サイトへのスムーズなアクセスに対して高い要求があったそうだ。
アリババクラウドのインフラと包括的なプロダクト群により、「ゼンレスゾーンゼロ」は高負荷のサーバや大量のゲームデータ処理、プラットフォームの安定性に関する課題を解決し、7月4日のグランドローンチ当日に同時ログインしたプレイヤーに対してスムーズな体験を提供できたとしている。なお、ゲームはローンチ後1週間で5000万ダウンロードを達成したという。
Atlasなど東南アジアにデジタル基盤を提供
シンガポールに拠点を置くB to B旅行テクノロジープロバイダーであるAtlasは、アリババクラウドのインフラや機械学習、AIアーキテクチャを利用して、世界50社以上の旅行販売業者、および150社以上の格安航空会社にサービスを提供している。
アリババクラウドのQwenとModel StudioプラットフォームはAtlasのデジタルチャットボットにも導入され、24時間体制でのカスタマーサポートを実現し、予約手続きや支払い方法に関するパートナー企業からの問い合わせに対応しているという。Atlasは2021年にアリババクラウドと提携して以来、運営コストを45%削減しているとのことだ。
また、デジタルワークプレイスソリューションに特化したタイのソフトウェア企業であるCodiumは、アリババクラウドと提携してクラウドインフラを含むソリューションを活用している。この提携は、タイ国内の企業にデジタル基盤を提供し、アクセスしやすいクラウドサービスと包括的な現地サポートを通じて、タイのクラウド市場のエコシステムを強化することを目指しているという。
ユネスコと共に教育の未来を支援
同社はデジタルトレーニングを通じて、生成AIの恩恵を高等教育機関に提供することを目的に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が後援する国際高等教育イノベーションセンター(International Centre for Higher Education Innovation)との提携を開始。世界中の学習者向けに「GenAIとクラウド・マイクロ認定オンラインプログラム」を開始する。
このプログラムは、アジアおよびアフリカの大学を含む高等教育機関の教育者と学生が対象だ。全6コースで構成され、生成AIやクラウドコンピューティング技術の基礎知識とその応用を提供する。図解やベストプラクティスの提供を通じ、生成AIを教育活動に組み込むことで、効率的な学習を支援するという。
各コースを修了後に受講者は試験を受けることで、UNESCO-ICHEIとアリババクラウドが共同で発行するマイクロ認定資格を取得できる。このプログラムは段階的に展開され、2025年末までに約1万2000人の教育者と学生が恩恵を受けることを目指す。