岸田文雄首相の退陣が決まり、鈴木俊一財務相の去就が注目されている。事実上、次の首相を決める自民党総裁選は立候補者が多く、誰が新首相になっても鈴木氏交代は既定路線といわれる一方で、国内外で金融政策の転換が進む中、市場との対話で経験を積んだ鈴木氏が続投する可能性は「ゼロではない」(財務省幹部)ためだ。
8月27日の閣議後会見で鈴木氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、9月会合で利下げに踏み切る考えを示したことについて「(日本経済に)どのような影響が生じ得るのか注視していきたい」と述べた。財務省幹部は、金融市場が動揺しやすい局面では、「責任が重い人ほど、当たり前のことを繰り返すことが大事だ」と解説する。
というのも、今春以降の日銀の発信が「お粗末」(官邸筋)なため、鈴木氏の発言にも批判が〝飛び火〟している。23日の参議院財政金融委員会で鈴木氏は、円安や輸入物価上昇の責任を日銀に負わせていいとは思わないがどうかと問われ、「日銀に全て責任があるとは毛頭思っていない。そこには日ごろの意思疎通も情報共有もある」と強調した。
「金融政策そのものは日銀の独立性が大事で、そこは踏まえないといけない」とも述べ、「金融政策から派生する出来事について、全て日銀に責任を押し付けるのは避けないといけない」と日銀を〝擁護〟してみせた。
一方、この日、鈴木氏は自民党総裁選に関しても言及。財政政策が「大いに議論がなされることを期待している」とした上で、経済と財政規律の両立の重要性を示し、「私自身は財政規律の旗を降ろさずやっていかなければいけない、というつもりで仕事をしてきた」と述べた。