コンコードエグゼクティブグループ社長CEO・渡辺秀和が語る「豊かな社会をつくるために『キャリア設計』の知見を届けたい」

人は、人生の大半の時間を仕事に注ぎます。豊かな人生を歩む上で、「キャリア設計」は、どなたにとっても大切なリテラシーと言えるでしょう。

 しかし、日本の教育環境では、キャリア設計の知見を学べる機会がほとんどありません。この状況に強い危機感を持ち、2008年にキャリアデザインファームとして弊社を創業しました。

 以来、コンサルタントや企業の経営幹部、起業家といったビジネスリーダーのキャリア設計を支援し続け、一人ひとりの夢や志の実現に向けて伴走。豊富な支援実績が評価され、10年に「日本ヘッドハンター大賞」初代MVPを受賞しました。

 培ってきた知見を若い層にも伝えようと、キャリア教育活動にも取り組んでいます。17年には、東京大学の学部3・4年生、院生を対象に、全12回にわたる本格的なキャリアデザインの授業を行いました。

 出席者は毎回300人近く。各授業の終わりに拍手が沸き起こる様子を目にした私は、キャリア設計の知見が学生に必要とされていることを確信しました。

 一方で驚いたのは、初回の授業で行った職業観アンケートで「学生時代は薔薇色、社会人になったら灰色」という趣旨の回答が数多く寄せられたことです。東大で学ぶ優秀な学生の中にも、社会人生活に明るい希望を持てていない人が少なからずいることに、愕然としました。

 日本の就職活動の実態に目を転じると、2つの問題が潜んでいることに気づきます。

 1つは、多くの学生が、自分の好きなことや就きたい仕事を十分に考えずに、就活を行っていることです。「就職偏差値」や「企業ブランド」に翻弄され、好きでもない仕事に就いてしまうのはもったいないことです。

 もう1つは、大部分の学生が「社会に出る準備」が不十分なまま就職していることです。基礎的なビジネススキルや、他者と協働するスタンスを身につけずに入社し、顧客や上司に厳しく叱られる。結果、仕事が苦痛ばかりとなってしまうのです。

「新卒社員の約30%が3年以内に離職する」という不幸な状況は、実は25年以上前からずっと変わっていません。つまり、早期離職の原因は〝今どきの若者〟ではない。「社会で活躍する人材を育てる」という観点が十分ではないまま続いてきた、日本の教育制度に根本的な問題があるのではないでしょうか。

 弊社は今年6月、大学1年生から使える就活サイト「CareerPod(キャリアポッド)」を立ち上げました。ここでは「スロー就活」を提唱しています。早期から自分の人生やキャリアにじっくりと向き合い、やりたい仕事を見つけ、進路を選ぶという就活スタイルです。

 キャリア設計のノウハウや体系化された仕事・業界の知識、社会に出る準備となる「長期インターン」の募集情報、仕事内容を丁寧に紹介した企業インタビューを提供し、学生のキャリア形成を支援しています。

 少々大げさかもしれませんが、キャリア設計には、日本を豊かな社会に変える力があると私は考えています。キャリア設計によって自分が望む人生を実現し、精神的にも経済的にも充実した人々が増えれば、日本全体で生み出す価値が飛躍的に高まるでしょう。これは、少子化の日本を活性化させる上で、非常に大きな意味を持ちます。

 キャリア設計のリテラシーを身につけることで、自分の好きな仕事を通じ、周囲の人々を幸せにし、より良い社会をつくる。そのような豊かな人生で溢れる社会を、皆様とともに実現していきたいと考えています。

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