【デジタルとリアルの融合:次世代Eコマースの成功戦略<第1回>】なぜ今、オムニチャネルマーケティングが重要なのか?

現在の小売ビジネスのマーケット環境においては、デジタルコマースとリアル店舗の連携がますます重要になってきている。それは、デジタルでの顧客体験を「温かみ」のあるものに再構築しつつ、リアル店舗での顧客接点につなげることが求められているからだ。これにより、ブランドの信頼性と顧客ロイヤルティーを高めることができるからである。そのための施策について、富士ロジテックホールディングスの吉村典也氏が、エスキュービズム取締役の梅木研二氏と、シナブル執行役員の曽川雅史氏に、ポイントや成功事例について聞いていく。第1回はエスキュービズム取締役の梅木氏に顧客データの活用法について話してもらう。

吉村:デジタルコマースの顧客データを有効に活用することが重要と言われていますが、具体的には、どのようなことでしょうか。

梅木:リアル店舗での購入が、ブランドとの初めての接点だったとしても、その後、オンラインショップへのアクセスが確認できる「顧客化」を実施したなら、購入履歴や行動・閲覧履歴を分析できるようになります。

顧客の嗜好や行動パターン、実現したいことを、少しずつ把握していけるのです。

このデータを元にして、オンラインだけでなく、リアル店舗への再来店を促進するための、コミュニケーションとキャンペーンを実施することが可能になります。

例えば、特定の商品を購入した顧客に対して、コミュニケーションメッセージと、オンラインショップ・リアル店舗の両方で利用できる特別クーポンを提供するといった施策を実施することが有効です。商品を購入せず、カゴ落ちしてしまった顧客や、商品を閲覧しただけの顧客に対しても有効な施策になります。

<デジタル顧客データを活用したリアル店舗への誘導戦略>

梅木:この施策を有効に実施、管理、評価するためには、デジタルPOSシステムを導入することが重要なポイントになります。リアル店舗に来店した顧客行動を、デジタルデータとして取得・統合することができるからです。

従来は、この顧客データの取得と一元化の方法として、ブランドのモバイルアプリに頼ることが、真っ先に考えられていました。しかし、現在は、多くの消費者が、自分でダウンロードしたアプリの数が多すぎて、管理しきれないような時代になっています。

今では、メールやLINEメッセージだけでも、オンラインとオフラインのデータを一元管理し、より精度の高いマーケティング施策を展開することによって、大切な「顧客体験」にすることができます。 そして、それは、メールやLINEメッセージからマイページリンクをクリックしたユーザーに対して、パーソナライズされたマイページ上で、顧客IDのバーコード・QRコードを表示することによって可能になります。

あるアパレルブランドでは、オンラインで人気の商品を、リアル店舗で試着でき、優先的に購入できるサービスを、ロイヤルカスタマーにだけ提供しています。ロイヤルカスタマーには、マーケティングオートメーションツール上でセグメントした順に、順次配信していきます。

オンラインとオフラインの購入体験をシームレスにつなげることによって、ロイヤルカスタマーが生んだUGCを、その後のセグメント配信にも活用することができるようになりました。大幅な売り上げ増加を達成できた成功事例です。

そのアパレルブランドでは、ロイヤルカスタマーの中でも、さらに上位にいるカスタマーに対する優先的な施策も実施しています。そういったロイヤルカスタマーからの来店予約を受け付けた際には、統合されたデータに基づく、MAからのレコメンドを、温かみのある接客とともに、提供しています。

このように、デジタルコマースとリアル店舗の連携を強化し、顧客体験を向上させることにより、ビジネスの成長を促進することができています。

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