【著者に聞く】『危機管理広報大全』広報・危機管理コンサルタント・山見博康

1500を超える先人の示唆に富む名言・箴言に学ぶ

「時々刻々にわれわれを悩ます小さな災難は、大きな災難に耐える力が幸運のあまりにすっかり衰えてしまうことがないように、われわれを絶えず訓練するためにあるのだ」(ショーペンハウアー『幸福について』)

 この心構えで日々を過ごすと、危機に襲われても冷静になれ、緊急に迫られても狼狽えず、適切な対応ができるでしょう。人生は闘いであると同じく経営も闘いです。

 危機は人災! 「社員一人一人の言動そのものが危機である」との認識を抱いて、災いを最大限避ける努力を日々怠らず、一旦直面したら、逃げずに雄々しく立ち向かう……。その際、本書が局面に応じて事典のように有用でありましょう。

 本書は、2013年ロングセラー『企業不祥事・危機対応広報完全マニュアル』(720頁)の新版化!

 近年、頻発する経営・事件・事故・不祥事の「4つの危機」に対応して、危機管理体制構築や謝罪会見演習(メディアトレーニング)の要請増に応じるべく4年半費やして、実践的な内容を更に充実拡充し、最厚最詳(7センチメートル・1568頁)に再生した本書は、私の40年に渡る広報経験のエキスであり「広報思想」の集大成です。

 最も伝えたいことは、自分と会社(組織)の有り方を一致させて、何事も自分に置き換えて考え、行動すること! 人間は血液(情報)の円滑な循環で正常に生きているが、組織も同じであることを肝に銘ずべきです。常に体調に留意し、定期に健康診断を行って早期発見を促し、適切な処置を心掛けるのです。その本質の理解がないので、後手後手となり適切な対応ができない。健康な身体と同様に、正確で必要な情報が正しい部署・人物間を適宜に上下する円滑な情報交通で生きるような健全な組織にしなければなりません。

 危機管理の書籍は多くとも、実行すべきことがプロセスとして判る本は少ない。私は、神戸製鋼という大組織における現場での実践経験と、その後コンサルタントとしての多様多彩な局面にて即座にアドバイスを行い、時には自ら会見を率先指導しています。そのノウハウを一目で判るように図示し、いつ何を実行すべきかが判るプロセスを凝縮しています。

 従って、初心者・経験者を問わず、どの分野でも、人間のあり方から組織のあり方を考え、危機管理の本質を学び、危機への備えから一連の流れとして理解できるのです。

 本書により、何事も原点に立ち還り、日々眼前に現れる物事・事象の本質を把握し、哲学的に物事を考える習慣をつけましょう。

 その際、各界の優れた識者やメディア・企業幹部による200を超すコラムやアドバイスや随所に記された1500を超える先人の示唆に富む名言・箴言に学んで欲しいものです。

冨山和彦の【わたしの一冊】『「働き手不足1100万人」の衝撃』