セブンがカナダ企業から買収提案 成立すれば過去最大の日本企業買収に

提案に応じない場合でも株主還元圧力は高まる⁉

 セブン&アイ・ホールディングスが、カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けた。セブンの時価総額は約4.6兆円。買収金額は少なくともそれ以上となるため、成立すれば、外資による過去最大の日本企業買収となりそうだ。

 アリマンタシォンはカナダや米国で、ガソリンスタンド併設型のコンビニを運営。売上高は約10兆円で、セブン(約11兆円)とほぼ同じ。ただ、売上の約7割はガソリン販売によるもので、小売り事業の強化を図るため、近年、米国でコンビニ事業を強化するセブンに買収提案したとみられる。

 セブンは、同社の提案を受け入れるかどうか、社外取締役のみによって構成される特別委員会で検討し、その後、同社に返答する予定。

 現状では、セブンがクシュタールの提案を受け入れるとは思いにくいとの見方が多く、実現の可能性は低い。ただ、セブンが提案に応じないと回答した場合、アリマンタシォンが「同意なき敵対的買収に踏み切る可能性も出てくる」(金融筋)。

 経済産業省は昨年策定した「企業買収における行動指針」において、「買収提案に応じるかどうかという判断の合理性について、説明責任を果たせるように行動すべき」と指摘。セブンには提案に応じない場合でも、応じないことへの説明責任が求められる。

 企業買収が専門の京都大学経営管理大学院特命教授・松本茂氏は「買収防衛のため、かつてのような持ち合い株を増やしていくのか、非上場化してプロテクトするようにするのか、そうしたことを考える企業が増えるかもしれない。しかし、上場企業である限り、こうした提案をうけるのは当たり前。セブンがどういう対応をするのか、一つの試金石になるのではないか」と指摘する。

 今後はセブン以外にも、買収提案を受ける日本企業が出てくることは容易に想像できる。国境を越えた外資による買収リスクにどう対応するか。経営者の対応や覚悟が問われる時代と言えそうだ。

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