南海トラフ「巨大地震注意」で電力各社が警戒強化

初となる南海トラフ地震の「臨時情報(巨大地震注意)」が発表され、インフラ企業を中心に警戒を強化する動きが広がった。電力大手は対策本部の設置や原発の防災確認を実施。約1週間、想定される最大クラスの地震に備えた。横断的連携だ。

 8月8日午後4時42分ごろ、宮崎県沖の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生した。気象庁は一時、愛媛、高知、大分、宮崎、鹿児島各県に津波注意報を発令。加えて、南海トラフ沿いで巨大地震が発生する可能性が平常時と比べ高まっているとして、茨城から沖縄までの29都府県707市町村を対象に臨時情報を発表した。

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 原子力規制庁によると、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)や九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)などは今回の地震による異常はなかった。一方、臨時情報を受け、原子力規制委員会は原発事業者に防災体制を確認するよう注意喚起した。

 九州電は8日、「南海トラフ地震対策総本部」を設置。9日には宮崎県や大分県などの支店とテレビ会議でつなぎ、被災時の電力の復旧手続きや協力会社との連携態勢などを確認した。関西電力も「非常災害対策総本部」を立ち上げ、対応方針を確認。東京電力ホールディングスや四国電も24時間の連絡体制を確保した。

 中部電力は、停止中の浜岡原発(静岡県御前崎市)において約300人で見回りなどを実施したほか、本社や支社に待機要員を確保。地滑りが発生する可能性があった地域の水力発電所を一時停止したが、実際の被害はなかった。東電グループと中部電が折半出資する発電会社JERAは、「非常態勢」に入り、備蓄や燃料運搬船の避難手順を確認した。

 臨時情報の発表から1週間が経った15日、後発地震に備えた防災対応の呼び掛けが終了。各社が警戒態勢を解く中、ある業界関係者は「人命の安全確保や設備被害の早期復旧のために日頃から備えていく」と話し、改めて気を引き締めた。

 国や企業だけでなく、自分たちがどう備えるか。国民一人ひとりにも覚悟が求められる。