【「AI」「D2C」で急成長の事業モデルとは?】スキンケアブランド「Yunth」展開のAiロボティクスが東証グローズ上場

スキンケアの「Yunth(ユンス)」や美容家電の「Brighte(ブライト)」などのD2Cブランドを展開するAiロボティクスは8月23日、東京証券取引所グロース市場への新規上場を承認されたと発表した。AIを活用した成長性の高いD2C企業の新規上場であり、株主に作詞家の秋元康氏や幻冬舎の見城徹社長が名を連ねていることからも注目度は高い。

同社はAIを活用した独自の成長ロジックで、自社ブランドや商品の企画開発・マーケティング・CRMまで一気通貫的に分析を行い、LTVを最大化し、高成長を遂げている。2024年3月期の売上高は、前期比93.7%増の70億6100万円だった。

▲D2Cブランド事業における売上高推移(単位:百万円)

<動画配信や広告配信事業で創業>

Aiロボティクスは2016年4月に動画配信サービスや広告配信事業を行う「HowTwo株式会社」として創業した。

2018年10月に成果報酬型「AIマーケティング事業」を開始し、広告配信事業の収益性向上や広告主のニーズに対応するため、成果報酬型の広告運用業務に移行。広告運用自動化のため、AIシステム「SELL(セル)」の開発を開始した。

2020年7月に商号を「Aiロボティクス株式会社」に変更。2021年2月にスキンケアブランドを展開するYunthや17skinに出資し、2022年1月にはこの2社を完全子会社化している。このM&Aを機に、2022年2月から自社ブランドの企画、販売を行う「D2Cブランド事業」を開始した。2022年11月にはYunthと17skinを吸収合併している。

2023年5月 経営資源の選択と集中により、「AIマーケティング事業」のリソースを「D2Cブランド事業」にシフトすることを決定した。「AIマーケティング事業」はその後稼働件数を限定し、現在は休止している。

2024年2月には、新たに美容家電ブランド「Brighte」を立ち上げ、2機種の美顔器を発売した。

<AIマーケティングのノウハウでD2Cブランドの成長加速>

「AIマーケティング事業」で開発した「SELL」によって蓄積したノウハウやデータを自社ブランドのマーケティングに活用し、さらに「D2Cブランド事業」に関わる機能拡張を行い、自社ブランドの成長を推進している。

▲「AIマーケティング事業」のノウハウを「D2Cブランド事業」に活用

▲「SELL(セル)」の活用領域

「D2Cブランド事業」では、「自社ECサイト販売」「ECモール販売」「店頭卸販売」の販売チャネルを通じて、自社で企画・開発し、OEMに製造委託した商品を顧客に販売している。主力ブランドである「Yunth」の「生VC美白美容液」は、2024年7月時点で延べ300万個以上の出荷実績を誇る。

▲販売方法別の収益イメージ

<自社ECサイト以外にモールや店頭でも販売>

「自社ECサイト販売」においては、顧客に一定間隔で継続的に商品をお届けする、定期購入サービスを中心とした販売活動を行っており、新規の定期購入者を増やし、定期購入者のLTVを維持・向上させることで継続的な収益が見込まれるストック型ビジネスモデルとなっている。自社ECサイトへの顧客誘導は主にSNS広告を中心に行っているという。

▲「Yunth」の定期会員数推移

「ECモール販売」は、「楽天市場」や「Amazon」などのECモール内に出店し、商品の販売を行っている。商品ページの表示や商品の詳細説明に注力し、分かりやすい表示を心がけているという。さらに、自社ECサイト販売同様の丁寧な顧客対応や、商品そのものの魅力が評価され、大手のコスメ・美容の総合サイトである「@cosme(アットコスメ)」で、「ベストヒット賞2022 ブランド新人賞」を受賞したり、「楽天市場」では「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2023 特別賞」、「楽天上半期ランキング 2024 美容・コスメ・香水ジャンル賞 1位」を受賞したりしている。

「店頭卸販売」として、販売代理店に対する卸販売も展開している。同社が販売代理店に対して販売した商品は、全国のドラッグストアやバラエティショップなど約6200店舗(2024年7月現在)の小売店を通じて顧客に販売している。

<2つの主要ブランドで商品開発を強化>

スキンケアブランドの「Yunth」、美容家電ブランドの「Brighte」を主要ブランドとして、これらのブランド内で商品のラインナップを拡大していく。

「Yunth」は、youth(若さ)にかけた造語で、スキンケアブランドとして、商品のラインナップを拡大しており、今後も同ブランドでの商品開発を予定している。主力商品である「生VC美白美容液」は、メラニンの生成を抑制しシミやそばかすを防ぐことで、美白効果が認められる美容成分アスコルビン酸を配合した商品。1回使い切りで、新鮮感のある個包装の商品パッケージや、商品の使用感が特徴的だという。

▲「Yunth」商品ラインナップ

SNSを中心に認知拡大を行っており、同社の業績を牽引する商品となっている。その後の商品においても、アスコルビン酸を配合した商品には名称に「生VC」を付しており、顧客からYunth=生VCという一定の認知も得られていると考えている。

2024年2月に販売を開始した「Brighte」は、bright(明るい、光る)にelectronic(電子)を連想させる「e」を付け加えブランド名とした。中価格帯の美容家電ブランドとしての位置付けであり、今後も同ブランドで商品を展開していく予定だ。

同社として初めて著名タレントを起用したブランディングも行い、顧客への認知拡大を推進している。販売については、これまでのECサイトを中心とした販売に加え、家電量販店向けの卸販売も新たに行っている。

▲「Brighte」商品ラインナップ

ブランド開始とともに、3つの異なるモードを搭載し多機能が特徴の「ELEKI LIFT」、流行のブラシ型美顔器「ELEKIBRUSH」の2機種の美顔器を販売している。

主要2ブランド以外にもアクセサリーブランド「LOEM TOKYO(ロエム トウキョウ)」、プロテインブランド「NIJI PRPTEIN(ニジプロテイン)」を展開している。今後も新規のブランドを開発していく可能性もある。