【データに見る「ECの地殻変動」】<第30回>ネットショップのECモール利用率にみるEC市場の現状

気付けば最近「アフターコロナ」という言葉が使われなくなった感がある。振り返ればコロナ禍でEC市場は追い風だったことは記憶に新しい。だがその反動で厳しい戦いを強いられている事業者は多いだろう。

消費者のリアル回帰に引き続き変化はなさそうだ。しかしECモールについては特に「Amazon」を中心に堅調に思える。もちろん反動を受けていることに違いはないが、個人消費がリアルかECモールかに二極化しているように見える。

ということでこのあたりを数値で検証してみたい。本紙6月13日号に「ネット通販売上高ランキングTOP532〈2024年版〉」が掲載されている。ランクインしている各ネットショップのECモール利用状況をもとに、「Amazon」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」を全て利用する「3大モール網羅型」、3大モールのいずれかを利用する「3大モール特定型」、自社サイトのみで勝負する「自社サイト特化型」に独自に分類してみた。

結果は円グラフの通り。3大モール網羅型は36.8%と実に全体の3分の1以上を占める。次いで多いのが3大モール特定型で31.0%。両者を合算すると67.8%になる。

つまりTOP532のネットショップのうち3分の2以上が3大モールを少なくとも1つは必ず利用しているということだ。一方で自社サイト特化型は28.0%に留まる。この結果は多くのネットショップがECモールに強く依存しているということの証だろう。

<ECモール依存が強い>

あくまでもこれはTOP532の分析結果なので全てのネットショップを対象とすればECモール依存度はやや低くなるのではと予想する。

しかし売り上げの大きいTOP532の状況とあってEC市場全体に占めるウエイトは高い。無論、3大モール網羅型や3大モール特定型でも大半は自社ECも構えている。

ECモールと自社ECの売上比率は各ショップでまちまちだろう。とはいえマクロ的にはECモール依存が強い状態であると考えられる。

<最適なバランスは?>

この状況をどう捉えればよいか。消費者目線でのECモールの特徴は品ぞろえ、頻繁なセール、物流速度、経済圏といったところだろう。これが消費者のECモールの関心が高まる要因だと思う。

一方、ネットショップ目線では自社ECに力を入れたい気持ちはあるものの、結局のところ売れるのならどちらでも構わないといったフラットな姿勢をとるネットショップが多いと見る。

筆者は自社ECもECモールも両方盛り上がってほしいと思っている。だが、現状ややバランスに偏りがあるとの見方だ。

ネット上には「自社ECかくあるべし」との論説のようなものを多く見かける。もちろんそれはそれで構わないし、筆者も関心を持って見ることが多い。

だが、場合によっては一度リセットした上で自社ECのあり方について大局的な視点で大胆に再考してみても良いのではと思う。EC業界を挙げて取り組めば状況は変化するだろう。