【ヤフーショッピングの現状は?】GMVは8.3%増 LYPプレミアムと売り場作りが鍵

LINEヤフーが運営する「ヤフーショッピング」のGMV(流通額)が復調傾向にある。2024年1- 3月期のGMVは前年同期比10.3%増、今期2024年4―6月期のGMVも同8.3%増とGMV減少に底を売った状況だ。今後の「ヤフーショッピング」の展開について、畑中基執行役員は「『LYPプレミアム』会員の増加と販促、そして『ヤフーショッピング』において分かりやすい売り場作りが鍵を握る」と説明する。畑中執行役員に、現在の「ヤフーショッピング」の状況と、ソーシャルギフト提供の理由、翌日優良配送などについて聞いた。

<GMVは復調傾向>

ーー昨年末から「ヤフーショッピング」のGMVが復調傾向にある。復調理由について伺いたい。

2021年度と比較すると、まだ2021年度のGMVの規模には戻っていないが、2022年度よりは復調傾向にある。理由としては「LYPプレミアム」とビックボーナスなどの大型販促が関係している。

昨年末から「ヤフーショッピング」においてマーケティング費を多く投資できるようになり、今年の2月から「LYPプレミアム」のプロモーションに本格的に注力できるようになった。

新規登録者向けに初めて「LYPプレミアム」に登録したら、1万円相当のクーポンを配布するキャンペーンを実施したり、既存登録者向けには「超PayPay祭」などの大型イベントを実施して、会員登録と「ヤフーショッピング」の利用促進を図った。新規登録者向けの施策もうまくいき、無事に「LYPプレミアム」会員の増加につながった。

5月には「ヤフービックボーナス」を開催し、多くの人からの「ヤフーショッピング」の利用につながった。目標とする数値も高かったが、無事に目標数値も超え、結果として今期の「ヤフーショッピング」のGMVの成長に貢献した。

ーー「ヤフーショッピング」に出店しているストアから「大型販促がある日とない日では売り上げに大きな差が出る」という声も聞く。どう捉えているか?

課題の1つだと考えている。「ヤフーショッピング」において、「ヤフービックボーナス」のような大型販促がないときに、どれだけ「ヤフーショッピング」を盛り上げていけるかが重要だと考えている。

販促に関しては、捉え方によるが、確かに大型販促は日常的に行っているものではない。だが、「ヤフービックボーナス」ほどの大型販促ではないが、日常的にお得に商品を購入できる販促も展開している。

日替わりで、「今日はクーポン配布でお得」、「今日はあるカテゴリーがお得に商品を購入できる」などを展開し、これを複数組み合わせて、「ヤフーショッピング」のベースを上げていこうと強く考えている。今後もこの考えは変わらない。

「ヤフービックボーナス」「超PayPay祭」を実施するときとしないときとで、売り上げやGMVに差が出ることは理解している。毎日大型販促を実施すれば、売り上げ・GMVともに拡大するのではと思うかもしれないが、毎日実施すると消費者は見慣れてしまう。どう”バランス”を取っていくかが必要だ。

<「PayPay」懸念点への対処法は?>

ーー「超PayPay祭」などで還元する「PayPay」ポイントが「ヤフーショッピング」でないところで使われているという懸念点もある。今後どう対処していくのか?

「PayPay」がここまでの経済圏を築けたのは、「PayPay」がどこでも使用できるという”縛り”をなくしたからだ。LINEヤフーとしては、ユーザーが「ヤフーショッピング」で「PayPay」ポイントを使用していただけるよう、より一層魅力ある売り場を作っていかなくてはいけない。

また、「5のつく日」で付与していた「PayPay」ポイントを「ヤフーショッピング商品券」に切り替える施策も実行している。こうして「ヤフーショッピング」に還元できる仕組みを構築していく。 

ーー「PayPay」に関しては、今すぐ「PayPay」ポイントを利用できる「今すぐ利用」も開始した。反応はどうか?

2024年3月までは、特定の日のみ「今すぐ」利用を適用していたが、同年4月から毎日利用できるように変更した。実証実験を通じて、反応が良かったため、切り替えることにした。

実際に4月から常時利用可能にしたが、ストア・消費者からの反応も良い。売り上げ・CVR(購入率)などの数字面でもポジティブな変化が表れている。現金値引きのような見え方にになるため、安く見えるのだろう。

<ソーシャルギフト開始の背景は?>

ーー「ヤフーショッピング」において、ソーシャルギフトの提供も開始した。提供開始の要因は?

それはやはり”ギフトを気軽に送ってほしいから”だ。私もヤフーとLINEが統合するときに、「ヤフーショッピング」側の責任者として、2社でどのようにシナジーを作っていくかの議論の場に参加した。

「ヤフーショッピング」において、以前より購入者が商品の注文先を自分の自宅ではなく、別の住所に設定していることが多かった。そのため、もう少し「ギフト」を贈りやすくすれば、さまざまなニーズに対応できる。中元・歳暮・母の日・誕生日などのイベントのときに気軽にギフトを送ってもらえることを目指している。 

ーーLINEヤフーとしては、ソーシャルギフトサービス「LINEギフト」も提供している。「LINEギフト」と「ヤフーショッピング」の関連性についてはどう考えているか?

「LINEギフト」は当日にギフトを贈るという当日需要が高い。一方、「ヤフーショッピング」は当日ではなく、少し前の日に届ける、そして購入時に「PayPay」ポイントがたまるため、その点で使い分けしてもらいたい。 

ーーソーシャルギフトサービスの提供が「ヤフーショッピング」のさらなるGMVの増加につながると考えているか?

つながると考えている。コマースカンパニーとして、「LINEギフト」と「ヤフーショッピング」の二つの存在が、会社の成長にもつながる。

「LINEギフト」は「LINE」でつながっているため、関係性が近い友人に贈る場合が多いと思っている。相手の好みを把握していることが多いため、何を贈ればいいか分かる。一方、「ヤフーショッピング」では、そこまで距離が近くない人にギフトを贈る場合が多い。友人だけでなく、職場の人や取引先、ちょっとした関係の人にプレゼントを贈る人も多いだろう。「ヤフーショッピング」でギフトを贈る人は、多くの商品から当たり障りのない、普遍的に人気のある商品を送る人が多いだろう。

<「LYPプレミアム」会員の分母を拡大>

ーー今期のこれから、そして来期にむけた展望を伺いたい。

基本軸は「LYPプレミアム」だ。「LYPプレミアム」会員の分母を増やし、さらに会員になってもらった人に対して、お得な販促を展開して、継続的に購入してもらうことを目指していく。

あとは分かりやすい売り場作りだ。「商品の見せ方」「ソーシャルギフト」「動画」などを通じて、分かりやすく魅力のある「ヤフーショッピング」を実現していく。

ーー「LINE」のリニューアルも計画している。

今年度中に「LINE」をリニューアルする予定だ。「LINE」内にショッピングタブを設置して、「LINE」ユーザーからの商品の購入を図る。 

ーー「LINE」のショッピングタブとはどういうもなのか。「ヤフーショッピング」に遷移する仕組みなのか?

「ヤフーショッピング」には遷移しない。「LINE」内で商品の購入が完結する仕組みになる。普段友だちとコミュニケーションするために開く「LINE」の中で、新しい購入体験を提供する、これまでにないECプラットフォームだ。LINEヤフーの既存システムの利用により、「ヤフーショッピング」や「LINEギフト」に出店してるストアは、シームレスに出店しやすくなる。グループアセットのクロスユースにより、LINEヤフーコマース全体の成長を加速させる。

ーー配送面において、「翌日優良配送」も開始している。内容と顧客からの反応は?

「翌日優良配送」は翌日までに商品が届くことを条件にしている。「優良配送」は注文から+2日以内にお届けするなどの条件を満たした商品に、「優良配送」マークが付く。その中でも、翌日まで届く商品には「翌日優良配送」マークが付く。

「ヤフーショッピング」では「優良配送」ストアには、検索で上位表示される仕組みになっている。「翌日優良配送」では、さらに検索での上位表示を優遇する。現在は午前中に上位表示されるよう表示を強化している。

実際に顧客からの反応も良い。コロナ禍で商品が早く届くことは日常化した。スピーディーに商品が届くことを希望している人は多い。早く商品が届く、届かないでストアに寄せられる顧客満足度に違いが出ている。商品が早く届くことで、顧客満足度は向上するため、ストアの皆さんには強く薦めている。