【株価はどう動く?】二番天井は短期波動か長期波動か、強弱感が鋭く対立する局面

米大統領選の不透明感が相場の重石に

 2024年4月19日の安値、3万6733円と、5月30日の安値、3万6617年でダブルボトムが入り、日本の株式市場は「上昇第2波」に入ってきています。

 第1波の高値は3月22日の4万1087円でした。二番底を入れたこともあり、私は7月、8月に高値を付けるのではないかと見ていましたが、実際に7月11日に4万2426円という高値を付け、3月22日高値を抜く新高値を更新しました。

 ただし、ここでダブルトップになっています。短期波動の二番天井となって、下落調整局面に入り、株価は3万7000円台を付ける動きになっています。

 波動から見て、この後調整、底入れして、4万5000円プラスマイナス1000円を目指す、あるいは第1波で上げた分だけ株価が上昇する「倍返しの法則」の経験則で4万7000円を目指す可能性もあります。

 では、二番天井を打った後の下落調整局面はいつ頃終わるのか。また、4月24日に3万9263円という安値を付けた後の底入れはいつ、どの水準で入るのかを見極める必要があります。

 時間の波動からいうと、二番天井を付けたのが7月11日ですから、「3月またがり60日」で9月11日頃が転換点となる可能性があります。もし揉み合いが3カ月かかるなら10月11月頃が転換点となります。

 以上は短期波動の話ですが、もう1つ、長期波動でここが目先の天井だと思う人もいます。長期波動で見ると、バブルの高値である1989年12月末の3万8915円に対して、7月高値はダブルトップになっていると見ることもできるからです。もしそうなら、もっと大きく下落調整することになるでしょう。

 もう1つ、戦後5回の大相場がありましたが、うち4回が出発点から5倍以上になっています。6回目がアベノミクス相場、今は7回目が訪れています。過去の大相場で最も値上がりしたのは6倍でした。

 今回の長期波動の出発点は09年3月10日の7054円で、前年08年のリーマンショックを織り込んだ大底です。

 長期波動の7054円の6倍はおよそ4万2000円です。それもあって、4万2000円台を天井だと見る人が多いのです。ですからここは、強弱感が鋭く対立する局面です。

 私は、調整局面において上げ幅の3分の1押し、さらに下げても半値押しくらいの下げであれば、比較的短期間で7月11日の高値を抜き、4万5000円プラスマイナス1000円、さらには4万7000円を目指す展開になると見ています。そして9月11日頃までは揉み合い、日柄調整が続くというのが波動から見た読みです。

 では、材料面から見るとどうか。今、株価が下がっている1つの理由は、11月の米大統領選の行方が不透明であることです。ドナルド・トランプ氏とジョー・バイデン氏であれば、トランプ氏が勝つと思っていた人が多いと思いますが、バイデン氏撤退でカマラ・ハリス氏が登場したことでわからなくなりました。

 トランプ氏は主に、テスラのイーロン・マスク氏などシリコンバレーの起業家、富裕層、中産階級以上の白人に支持されています。対してハリス氏は主にインド系、アジア系、黒人系といったハリス氏のルーツに沿った労働者階級の支持が強い。はっきりと富裕層対労働者階級の戦いになっています。

 そこで、私は勝負は副大統領候補で決まるのではないかと見ています。トランプ氏は上院議員のジェームズ・デービッド・バンス氏を指名しましたが、米国政界でも「最右翼」に位置する考えを持っている人物だと思われます。一部の熱心な支持者には支持されていますが、多くの米国民は極度に右寄りの政権を望んでいるわけではありません。

 今後、ハリス氏が民主党大会で大統領候補者に選ばれた場合、副大統領候補に誰を選ぶか。この人が米国民の多数から支持されるようならば、ハリス氏が勝つ可能性が高まります。

 ただし、ハリス氏の欠点は政治上の実績がないことです。副大統領という実績はありますが、不評でした。実績のある独裁者か、これといった実績のない副大統領かを、米国民は選択することになります。

 以上のことから、以前にも増して、11月の米大統領選の行方はわからなくなりましたから、マーケットの不安材料です。

 もう1つは国内要因で、日銀が7月末、もしくは8月末に利上げするのかしないのか。利上げをしたら円高、デフレの懸念が出てきます(編集部注:実際、日銀は7月末の会合で利上げ。米経済の悪化懸念もあり、株価は大幅下落となった)。

 さらに、バブル崩壊後長年にわたって続いている、日本人の実質賃金の下落です。円安による物価高に、賃金上昇が追いついていないのです。この実質賃金がプラスになるかどうかが、株式市場にとっても重要ポイントになっています。8月、9月に発表されるデータでプラスになると1つの転換点となり、もみ合いを上に放れてきます。

 その頃には、米大統領選でどちらが有利かも見えてくるでしょう。日本にとっては岸田首相がバイデン氏と蜜月だったこともあり、政治・外交的にはハリス氏の方がやりやすいでしょう。

 ただ、経済的にはトランプ氏の方が米国の景気が一層よくなって日米の株価が上がると思います。しかし、大幅減税を打ち出していることもあり、一層インフレが加速する恐れがあります。

 今、投資家は疑心暗鬼で、売りか買いか迷う局面です。私は前述のように早ければ9月中旬、遅くても10月中旬に相場の転機が訪れて、日本の株価の上昇波動は変わらないと見ています。

 日本では9月に自民党総裁選が行われますが、政治の先行きに期待が持てないことは、株価に織り込まれていると思います。岸田首相が再選される可能性は高いと見ますが、選挙は〝買い〟というのが今までの経験法則ですから、9月総裁選近辺から株価が上がるでしょう。株式市場は新たなリーダーを望んでいますが、代わる候補がいないため岸田首相の続投が濃厚というのが今の政界の大方の見方となっています。ただ、選挙と相場は一寸先は闇と言われています。果たしてどうでしょうか。