業績を上方修正のニデック 今度は生成AI関連事業を育成

「今ある現実をしっかりとらえ、何に、どこに、誰と、どのように向かっていくのかを考え抜いた3カ月だった。昨年10月の(電気自動車向けの)トラクション(車載)モーター事業の方向転換以降、着実に大きな変化が見えてきた」─。こう語るのはニデック社長の岸田光哉氏。

 同社が2025年3月期の業績予想を上方修正。売上高は従来予想の2兆4000億円から2兆5000億円に、営業利益は2300億円から2400億円、当期利益は1650億円から1850億円に引き上げた。

 ニデックは昨年、注力するトラクション事業において、これまで中国中心だったビジネスの軸足を欧米や日本などへ方向転換。想定以上の値下げ競争が進む中国市場から距離を置き、収益を最優先する戦略へ転換したことが徐々に実を結びつつある。

 4月からソニー(現ソニーグループ)出身の岸田氏が社長に就任し、〝第2創業〟がスタートしたニデック。創業者(現グローバルグループ代表)・永守重信氏がトップダウンで経営を行っていた時代から、今度は岸田氏を中心とした新たなグループ経営へ転換を図ろうとしている。

 新体制が強化するのは、〝スリー新(新市場、新製品、新顧客)活動〟。その一環にあるのが、生成AI(人工知能)関連事業だ。生成AIが世界的に普及する中、高温になりやすいサーバーを冷やすためのAIサーバー向け水冷システムの需要が急激に拡大。同社はAIサーバー向けの水冷システムを次の収益の柱に育成しようとしている。

 かねてから掲げる30年度の売上高10兆円は、新体制でも継続。自社の自律的な成長で7兆円、新たなM&A(合併・買収)などで3兆円の成長を目指している。目標達成に向けては、トラクション事業と生成AI関連システムの強化が不可欠。岸田氏には生成AIという新領域で結果を出すことが求められる。

「稼げる日本復活、貿易立国を目指す」ニッセイ基礎研究所・矢嶋康次の提言