日本マイクロソフト 業務執行役員 エバンジェリストの西脇資哲氏は、7月29日開催のオンラインセミナー「TECH+セミナー Windows 11への移行 2024 Jul. 迫るサポート終了 ~移行の要点とWindows 11の新機能~」において、生成AI時代における新たなワークスタイルについて講演を行った。AI機能が統合されたWindows 11は、私たちの働き方をどのように変革するのだろうか。本レポートでは、その可能性とともに講演の要点をまとめる。

ハイブリッドワークのためにデザインされたWindows 11

西脇氏は冒頭で、生成AI時代に入ったことを強調し、Windows 11への移行の重要性を説いた。特に、古いOSを継続利用することのリスクについて言及。セキュリティリスクの増大、企業イメージの低下、法的責任、業務停止の可能性などを挙げた。

さらに、2020年春から本格化したハイブリッドワークへの対応も、Windows 11への移行を促す大きな要因となる。同氏は「Windows 11はハイブリッドワークに向けたユーザー中心設計になっている。ハイブリッドワークでのストレスを可能な限り減らしていくという考え方が根底にある」と説明する。

Windows 11の特徴と機能

Windows 11の特徴として、以下の点が紹介された。

  • 生産性向上のための自然で分かりやすい操作性
  • 軽量で高機能なブラウザ「Microsoft Edge」
  • リモートコミュニケーションとコラボレーション機能の強化(Microsoft 365アプリとの連携)
  • セキュリティ機能の充実
  • Windows 10との高い互換性(99.7%のアプリケーションが動作)

具体的な機能として、Microsoft Teamsとの連携が紹介された。タスクバーからのマイクミュートのオン/オフや画面共有など、ハイブリッドワークを支援する機能が組み込まれている。西脇氏は「こういった連携ができているのもマイクロソフトのWindows 11だからこそ」だと述べ、統合されたエコシステムの強みを強調した。

  • その他Windows11 23H2でのアップデート

生成AI時代への対応を強く意識したWindows 11

西脇氏は、Windows 11が生成AI時代に対応していることを強調した。特に、Windows 11に統合されている生成AI「Microsoft Copilot」(以下、Copilot)に注目が集まっている。Copilotは、従来の検索エンジン「Bing」に、OpenAIのGPT-4の能力を組み合わせたものである。Windows 11では、Copilotが標準搭載されており、1キーで機能を呼び出すことができる。

Windows11におけるCopilotの主なユースケースとして、以下が紹介された。

  • 英語記事の要約と翻訳
  • 文章作成支援
  • 画像生成
  • OSの設定変更や操作支援(壁紙変更、音楽再生、トラブルシューティングなど)

これらの機能により、ユーザーはAIと対話しながらさまざまなタスクを効率的に進めることができる。同氏は「私たちはコンピューターの操作をするのではなく、AIと対話をしながら物事を進めていく」と説明し、新しいユーザーインターフェイスの可能性を示唆した。

生成AIの機能を最大限に発揮する「Copilot+ PC」

西脇氏は、「Copilot+ PC」という定義を紹介した。これは、AIの推論処理に特化したNPU(Neural network Processing Unit)を搭載し、生成AI機能を最大限に発揮できるように設計されたPCを指す。具体的な要件として、40TOPS以上の演算処理能力を持つNPU、16GBのメモリ、256GBのストレージが挙げられた。

Copilot+ PCの5つの主要機能として、「リコール(過去の操作の再現と自動化)」、「コクリエイター(AIとの共同作業)」、「ライブキャプション(リアルタイム字幕)」、「スタジオエフェクト(音声・映像品質向上)」、「イメージセンター(画像生成)」が紹介された。これらの機能は、NPUを活用することで、CPU・GPUに負荷をかけずに高速処理が可能となる。

各アプリケーション上でCopilotを利用できる「Copilot for Microsoft 365」

Windows 11のCopilot機能は、Microsoft 365アプリケーション(Word、Excel、PowerPoint、Outlook、Teams、OneNoteなど)とも連携している。西脇氏は、PowerPointでのプレゼンテーション作成やExcelでのデータ分析におけるCopilotの活用例を示し、生成AI機能が業務効率を大幅に向上させる可能性を強調した。

具体的には、プレゼンテーションの自動作成、データの視覚化、レポート作成などが、自然言語での指示によって簡単に行えることが紹介された。同氏は「文章や画像、タイトルを作成する、デザインをするといった作業は、もう人間がやる仕事ではなくなってきている」と述べ、AIによる業務革新の可能性を示唆した。

セキュリティ強化と注目の法人向け機能

Windows 11は、セキュリティ面でも大幅な強化が図られている。西脇氏によれば、Windows 11と最新のハードウエアを組み合わせることで、セキュリティ攻撃のリスクを20%軽減し、セキュリティおよびIT部門の生産性を20%向上させ、デバイスの導入時間を25%削減できるという。

特に注目すべき機能として、「Windowsアプリ保護ポリシー」が紹介された。これにより、BYOD環境下でも、企業データの保護と端末の正常性チェックが可能になる。

その他、注目の法人向け機能は下記の画像のとおり。

  • その他注目の法人向け機能

Windows 10サポート終了へ早めの対応を

講演の最後に西脇氏は、Windows 10のサポート終了が2025年10月14日に迫っていることを強調し、早めの対応を呼び掛けた。

Windows 11は単なるOSのアップグレードではなく、生成AI機能を活用したワークスタイル改革のプラットフォームとして位置付けられている。企業は、セキュリティリスクの軽減と生産性向上の両立を図りつつ、新しい時代に適応するためのツールとしてWindows 11を検討することが求められている。