商品やサービスを利用していて不明な点が生じた際、まずはどのような行動を取るだろうか。公式サイトの閲覧や電話での問い合わせ、店頭での相談などが挙げられるだろう。こうしたさまざまな接点におけるCX(Customer Experience:顧客体験)満足度を調査した結果について、NICEの日本法人であるナイスジャパンが8月2日に発表した。この調査は今回で4回目となり、ポストコロナにおける消費者からの問い合わせ行動の変化や生成AIを用いた顧客接点について、企業と消費者の双方に質問が行われた。

企業調査はコンタクトセンター機能を管理・運用する部署に勤務し、かつ顧客対応方針の検討に関与する立場の人を対象とした。一方、消費者調査は過去1年以内に商品・サービスに関してFAQ(よくある質問)の閲覧やコンタクトセンターに問い合わせた経験のある人を対象とした。

消費者は不明点について「まずは自分で調べる」

調査の結果、消費者は商品・サービスについて不明点が生じた際に「まずは自分で調べる」と回答した人が95.2%だった。そのうち、自分で調べても解決しなければ問い合わせるという人が74.0%だ。しかし、結果的に「分からなければ諦める」と回答した人は、全体の約4割。十分な情報を提供できない場合、消費者の満足度低下につながると考えられる。

  • 約9割の人が不明点をまず自分で調べる(資料:ナイスジャパン)

    約9割の人が不明点をまず自分で調べる(資料:ナイスジャパン)

消費者はFAQページを利用したいものの企業は提供できていない

消費者が自分で情報を調べる際に、92.0%の人がWebサイトのFAQページを閲覧するという。しかしその一方で、FAQページを提供していると回答した企業は57.2%にとどまった。消費者はFAQページを利用したいと考えているものの、そのニーズには対応しきれていないようだ。

  • FAQページの提供にギャップが生じている(資料:ナイスジャパン)

    FAQページの提供にギャップが生じている(資料:ナイスジャパン)

FAQページを提供していても課題解決度は改善が必要

問い合わせの結果、課題が「解決することが多い」または「やや多い」と消費者が認識しているのは、「電話 / オペレーター」(91.7%)や「店頭・実店舗」(80.2%)などだ。消費者の利用意向が高いWebサイトのFAQページで課題を解決できたとする人の割合は55.2%。企業は単にFAQページを提供するだけでなく、消費者の課題を解決できる情報の提供が求められる。

  • 有人によるリアルタイムな対応での解決度が高い傾向に(資料:ナイスジャパン)

    有人によるリアルタイムな対応での解決度が高い傾向に(資料:ナイスジャパン)

ナイスジャパン セールスディレクターの島田宏巌氏は「課題の解決に寄与する電話対応だが、電話のつながりやすさについても消費者と企業の間では認識に差があるようだ。『つながりにくい』『つながりにくくなった』と回答している消費者が多く、企業は応答率を見直して改善すべき」と指摘していた。

  • ナイスジャパン セールスディレクター 島田宏巌氏

    ナイスジャパン セールスディレクター 島田宏巌氏

ちなみに、消費者は電話のつながりやすさについて、「以前よりつながりにくくなった」と回答した人は24.0%、「以前と変わらず、つながりにくい」と回答した人は44.5%だった。また、商品購入後に電話以外の方法で問い合わせをする理由について、その約6割を「電話がつながりにくい(または待たされる)」が占めているという。

消費者の満足度はそのままライフタイムバリューに直結

購入前に疑問が解決されないことがあった場合、他社の代替商品やサービスを購入(検討)すると回答した人は39.5%、諦める / 利用しなくなると回答した人は45.3%だ。購入後に疑問が解決されないことがあった場合の結果は、それぞれ24.8%と52.1%。

また、購入後のサポートが良ければ継続的な利用意向が高まるとする回答は72.2%であることから、購入後のサポートの良し悪しが継続的な利用の意向やライフタイムバリュー(顧客生涯価値)に影響を与えることが示された。

  • 課題解決の満足度がその後の利用意向に影響を与える(資料:ナイスジャパン)

    課題解決の満足度がその後の利用意向に影響を与える(資料:ナイスジャパン)

コンタクトセンターでの生成AI利用も注目度が高まっている

コンタクトセンターにおいて生成AIをすでに利用している企業と現在導入を進めているとする企業は、合わせて50.2%だった。現在計画中であると回答した企業も28.8%で、コンタクトセンターにおける生成AI活用は注目度が高まっている。

生成AIの利用用途としては、「FAQの生成」(64.2%)、「正答率の向上」(46.3%)、「オペレーターの支援」(40.7%)、「対話要約」(39.0%)などが挙げられた。生成AIの利用によって達成された導入効果については、「コスト削減」(67.4%)、「正答率の向上」(60.5%)、「オペレーターの負荷軽減」(53.5%)、「応答時間の短縮」(48.8%)などが挙げられた。

  • コンタクトセンター業務でも生成AIの活用に期待が高まっている(資料:ナイスジャパン)

    コンタクトセンター業務でも生成AIの活用に期待が高まっている(資料:ナイスジャパン)

ポストコロナでの問い合わせチャネルの変化

同社が実施したCX調査は今回が4回目となる。回答の変化を経年で見ると、消費者が問い合わせのために利用するチャネルについて「店頭・実店舗」が毎年増加している。新型コロナウイルスの影響が落ち着いたことで、実店舗の利用が増加していることがうかがえる。また、WebサイトのFAQページの閲覧が2023年実施の前回調査から10ポイントほど増加していた。

  • コロナ禍が落ち着いて実店舗の利用が増えているという(資料:ナイスジャパン)

    コロナ禍が落ち着いて実店舗の利用が増えているという(資料:ナイスジャパン)