デル・テクノロジーズ(以下、デル)は5月に、AIの利用に最適化されたWindows PCシリーズとして「Copilot+ AI PC」5製品を発表。そして7月31日、同社これら新製品を報道陣に紹介した。本稿では、法人向けCopilot+ AI PCとして展開する「Latitude 7455」を中心に紹介したい。

  • Latitude 7455 本体

    法人向けCopilot+ AI PC「Latitude 7455」

法人向けCopilot+ AI PC「Latitude 7455」 の特徴

Latitude 7455の本体カラーはタイタングレー、キーボードカラーは黒色と、ビジネスシーンでの利用を想定した落ち着いたデザインとなっている。Dell Latitudeとして初めてSnapdragon Xシリーズを搭載し、X1P-64-100(10コア)またはX1E-80-100(12コア)を選択可能。

32ギガバイトのメモリや1テラバイトのストレージ、英語配列キーボードなど、企業での生産性を高めるカスタマイズ構成をサポートしている点も特徴。セキュリティ面では、Plutonセキュリティプロセッサーによる保護に加え、顔および指紋など生体認証による保護に対応している。

また、法人向けの展開にあたり、脱炭素やGX(グリーントランスフォーメーション)を支援するため、リサイクル素材や低炭素排出アルミニウムといった低環境負荷素材を採用した。バッテリーには再生コバルトを50%使用。梱包材には紙などのリサイクル素材を使用し、100%再生可能としている。

  • Latitude 7455 スペック概要

    Latitude 7455 スペック概要

デルで法人向け製品を担当する白木智幸氏は「正直なところ、このモデルがどの程度ビジネスユーザーに受け入れてもらえるのか手探りな状況だった。しかし、リリース以降には中小企業から大企業まであらゆるセグメントのお客様から問い合わせがあり、われわれとしても驚いている」と、同製品の反響について語っていた。

  • デル クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 コンサルタント 白木智幸氏

    デル クライアント・ソリューションズ統括本部 クライアント製品本部 コンサルタント 白木智幸氏

マイクロソフトがCopilotを展開するための3つのプラットフォーム戦略

現在、マイクロソフトは「あらゆる製品・サービスにAI機能を搭載」を掲げ、生成AIを軸としたブランド「Copilot」を展開している。今後展開されるWindows PCのキーボードに新たに搭載する「Copilotキー」も、その本気度の表れだろう。このキーを押すと、どのような場面からでもCopilotを呼び出して生成AIとの対話を開始できる。

これからマイクロソフトがCopilotを展開する際には、「Microsoft Copilot」「Copilot stack」「Copilot+ PC」の3つのプラットフォームが中心となる。それぞれ、どのような戦略なのだろうか、概要を見ていこう。

Microsoft Copilot

Copilot for Microsoft 365は、WordやExcelやPowerPointといった従来のOfficeアプリケーションに、ChatGPTをベースとした生成AIを組み込んで利用できるソリューション。AIの基盤モデルとなるLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)に加えて、Microsoft 365を使うほどにAIが使いやすい形式で社内の非構造化データを蓄積するMicrosoft Graphなどを提供する。

さらに、セキュリティ保護のためのEntra IDにより、社内でのアクセス管理やデータ保護を支援する。ビジネスプロセスをMicrosoft 365に統合することで、セキュリティを保護しながら、効率的に生成AIを活用できるという。

  • Copilot for Microsoft 365が展開するAIソリューション

    Copilot for Microsoft 365が展開するAIソリューション

Copilot stack

Copilot stackは、ユーザーが独自のCopilotソリューションを開発するためのプラットフォーム。AIアプリなどを開発するためのスタックを、インフラレイヤーからUI(User Interface)レイヤーまで広く提供している。

インフラレイヤーについては、現在グローバルにデータセンターを60リージョンを展開し、今後さらなる拡大を狙っているとのことだ。また、基盤モデルは、小規模言語モデル「Phi-3」を含めたさまざまなモデルを展開する。ユーザーの要望に合わせたサイズのモデルを提供できるよう開発を進めているという。

  • 技術スタックの例

    技術スタックの例

日本マイクロソフトの業務執行役員を務める佐藤久氏は「現在はCopilotの拡張性にも注力しており、Microsoft Copilotはもちろんのこと、お客様自身がノーコード・ローコードで構築したCopilotを、WindowsやMicrosoft 365と同じUIで使えるような世界を目指している」と、展望について語った。

さらに続けて、「生成AIとDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは、決して別物ではない。DXを推進する中で整理してきたWebやクラウドや自社独自のシステムに対して、生成AIはその新しい窓口になるようなもの。DXのプロジェクトで投資してきた時間やコストを捨てて新しくAIの活用を始めるのではなく、それらのプロジェクトの新しいフロントとしてAIを導入してもらえれば、これまでの投資が無駄になることはないだろう」とも述べていた。

  • 日本マイクロソフト 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤久氏

    日本マイクロソフト 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤久氏

  • DXプロジェクトの投資を生かして生成AIを活用すべきだという

    DXプロジェクトの投資を生かして生成AIを活用すべきだという

Copilot+ PC

Windows PCの新たなラインアップとして展開するCopilot+ PC。40 TOPs(Tera Operations per Second)超のNPU(Neural Processing Units)、16ギガバイト以上のメモリ、256ギガバイト以上のストレージなどの構成を条件として認定される。

過去の作業を呼び戻して再開できる「リコール」や、ラフに描いたイラストを生成AIがさらに仕上げる「コクリエイター」、人物の自動追尾などでビデオ会議を支援する「スタジオエフェクト」、ビデオ会議時にリアルタイムで字幕を表示する「ライブキャプション」などを利用可能だ。

Copilot+ PCは今後、AIフレームワークとしてDirectMLに対応するPyTorch now nativeやWeb Neural Networkを提供予定とのことだ。

  • デルが発表した「Copilot+ AI PC」シリーズ

    デルが発表した「Copilot+ AI PC」シリーズ