富士伊豆農業協同組合(以下、JAふじ伊豆)、KDDI、KDDIスマートドローン、全国農業協同組合連合会(以下、JA全農)、静岡県経済農業組合連合会(以下、JA静岡経済連)は7月26日、静岡県沼津市で実施したドローンを用いた農薬散布の実証実験について発表した。
実証は5月22日に開始。第一回目は、手作業では2時間ほどかかる傾斜20度以上かつ2000平方メートルの畑への農薬散布に、自動航行ドローンを活用した。その結果、約93%減となる8分間で作業を終了できたとのことだ。
実証実験の背景
沼津市を代表する農産物「西浦みかん」は、品質と味のよさから価格が上昇し、出荷量も安定していることから、さらなる増産が市場から期待されている。その一方で、農業従事者の高齢化と後継者不足により、沼津市をはじめ多くの農家では労働力の不足が必至とされ、担い手不足が深刻だ。
さらに、西浦みかん園地は傾斜が20度以上の急斜面が57%を占めており、作業が重労働となる。こうした課題の解決に向けてスマート農業には期待が集まっており、五者は関係機関と連携して実証実験に至ったとのことだ。
2024年5月29日に、「農政の憲法」などとも呼ばれる「食料・農業・農村基本法」に「スマート農業」の促進に関する条文が盛り込まれるなど、日本の農業課題の解決に資する方法として注目を集めている。
実証実験の内容について
今回の実証では、JAふじ伊豆が沼津市の助成を受け購入した、KDDIスマートドローンが提供する農業用ドローンを活用した。このドローンは、物理的な基準局を必要とせずセンチメートル単位の測位精度を可能にするKDDIの高精度位置測位サービスと連携。傾斜地や散布対象が点在する果樹に対して、通常のGPSよりも正確な自動航行や効果的な自動散布が期待できる。事前に測量と飛行ルート設定を実施し、ドローン1台で農薬を自動散布した。
実証実験の結果
実証の結果、作業者は散布時の立会いのみで済むため、作業負荷が大きく軽減できることが示されたという。従来は手作業で2時間ほど要していた傾斜地での農薬散布を、自動航行が可能なドローンを使用することにより8分間で完了できることが明らかになった。
また、手作業による散布時と遜色なく薬液が葉と果実に付着していることを目視で確認。2024年7月の散布においては、水滴が付着すると変色する感水紙などを用いて、薬液付着量のさらなる定量分析を実施する予定。
実証全体としては、2027年3月31日まで期間を設けて年7回の農薬散布をドローンで実施する。実証実験の終了後は、日本の農業課題のさらなる解決に向け、KDDIが打ち出す新たなビジネスプラットフォーム「WAKONX(ワコンクロス)」を通じたサービス提供を目指す。