2期連続赤字のシャープ 新社長に沖津副社長が昇格

シャープは、副社長の沖津雅浩氏が社長兼CEO(最高経営責任者)に就任し、社長兼CEOの呉柏勲(ゴ・ハククン)氏が副会長に昇格した。2016年に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って以来、19年には「再建完了宣言」を行った同社だが、24年3月期は2期連続の最終赤字。またも経営再建モードに逆戻りしている。

「2022年に私がCEOに就任して以降、非常に困難な時期が続き、申し訳なく思っている」

 6月27日、呉氏は従業員に向けて、こう陳謝した。

 苦戦の要因は、主力のディスプレイデバイスの不振。このため、まず同社は赤字脱却に向け、工場の最適化に着手。かつて〝液晶のシャープ〟隆盛の象徴だった大阪・堺工場は9月で大型液晶パネルの生産を停止。今後はKDDIやソフトバンクがAI(人工知能)データセンターとして活用する方針で、中小型に関しても生産能力の縮小や他社との協業を図る考えだ。

 また、同日付けで親会社の鴻海で董事長の劉揚偉(リュウ・ヤンウェイ)氏が会長に就任。鴻海流のスピード経営を加速させる他、ガバナンス強化のため、日本取引所グループ元CEOの清田瞭氏などが社外取締役に就任する。

 沖津氏は1980年のシャープ入社後、主に白物家電事業を中心に国内外でキャリアを積んできた。今後、同社はディスプレイ事業での赤字を止血しつつ、白物家電などのブランド事業を強化していく方針。

 7月1日、沖津氏は社内に向けて「私は44年間、シャープ一筋でやってきた人間であり、会社を思う強い気持ち、シャープを世界に誇れる会社に成長させたいという気持ちは誰にも負けない」とし、「One SHARPで一致団結し、この正念場を乗り越え、世界に誇れる会社へと成長させていきましょう」と呼び掛けた。

 呉氏にしろ、2016年に鴻海から送り込まれ、社員寮に住み込み、再建を主導した元社長の戴正呉(タイ・セイゴ)氏にしろ、ビジネスモデルそのものの変革はできなかった。液晶に代わる成長戦略をどう描くか。沖津氏に課された課題である。

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