三井物産がUAEのLNGプロジェクトに参画

「天然ガスはエネルギー移行期における現実解」

 三井物産がUAE(アラブ首長国連邦)のLNG(液化天然ガス)プロジェクトに参画する。

 場所はアブダビ西部のルワイス工業都市。生産能力は最大で年間960万トン。2028年の生産開始を目標としている。

 同プロジェクトは、アブダビ国営石油(ADNOC)が60%を出資。三井物産の他、石油メジャーの英BPや英シェル、仏トタルエナジーズが10%ずつを出資。総事業費は約55億米ドル(約0.9兆円)。このうち、三井物産は約5.5億米ドル(約880億円)を負担する。

 三井物産は1970年代からADNOCのLNGプロジェクトに参画。現在推進中のクリーンアンモニア製造や水素輸送など、約50年にわたって協力関係を構築してきた。また、今回のプロジェクトへの参画を通じて、BPやシェルなど、エネルギー大手との戦略的パートナーシップの更なる強化につなげたいとしている。

「エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立は社会的な課題。環境負荷が比較的低いLNGは、GHG(温室効果ガス)排出量低減に貢献する燃料として、エネルギー・トランジション(移行期)における現実解として引き続き重要な役割を担っていくと考えている」(同社幹部)

 2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、世界でLNGの存在感が高まっている。天然ガスは石油や石炭に比べて、燃焼時にCO2(二酸化炭素)排出量が低減されるため、脱炭素への移行期に安定した供給が期待されるからだ。

 現在、政府ではエネルギー政策の方向性を示す「第7次エネルギー基本計画」の策定が進んでいる。脱炭素を目指して再生可能エネルギーを増やすのは当然だが、再エネは天候に左右されやすい。化石燃料は少ないコストで大量のエネルギーを取り出すことができるが、CO2を排出する。CO2を排出しない原子力は核のゴミ(放射性廃棄物)処理問題が付きまとう。

 それぞれに利点と課題がある中で、企業活動や日々の生活に欠かせないエネルギーをどう確保していくか。無資源国・日本にとって、天然ガスの果たす役割はまだまだ大きい。

【著者に聞く】『エネルギー危機の深層 』JOGMEC調査部調査課長・原田大輔