大日本印刷(DNP)は7月24日、生活者が自治体の各種サービスをインターネット上の仮想空間・メタバースで利用できる「メタバース役所」の同日から提供を開始したことを発表した。

今回、より多くの自治体がメタバース役所を活用できるように、複数の自治体で運用を分担してサービス利用料を抑える共同利用モデルとして提供する。

DNPは、メタバース役所の提供を通じて自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、生活者の利便性を高めて、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」の実現に貢献したい構え。

  • 「メタバース役所」の共通エントランス(左)、複数の自治体が「メタバース役所」を共同で利用するイメージ(右)

    「メタバース役所」の共通エントランス(左)、複数の自治体が「メタバース役所」を共同で利用するイメージ(右)

メタバース役所提供までの背景

国内の各地域では、少子高齢化による人口減少や大都市圏への人口集中などによる労働力不足で、公共サービスの維持が困難になることが懸念されており、デジタル技術を活用した、さらなる最適化・効率化が求められている。

これらのニーズに対してDNPは、年齢・性別・言語などのあらゆる条件で人々が互いに分け隔てられることなく、リアルとバーチャルの双方の空間を行き来して新しい体験と経済圏を創出する「XRコミュニケーション」事業を2021年より展開している。

その一環で、教育分野でのメタバースの活用や、地域の公共施設と連動したメタバースの構築などによって自治体の地域活性化を支援している。

また、DNPは、2024年2月に三重県桑名市とともに、メタバース役所で「電子申請手続きの総合窓口」「各種相談業務」「市民交流の場」を提供する実証実験を行っており、これらの経験・ノウハウを活かして、サービスの提供を開始した。

メタバース役所 の特徴

今回、全国の自治体のDX推進を支え、複数の自治体の連携によって共通する課題の解決につなげていくため、メタバース役所の共同利用モデルのサービスを開始する。

サービスの特徴として、複数の自治体が、メタバース役所をプラットフォームとして共有することで、相互の連携強化による住民サービスの質の向上につなげることを挙げている。

例えば、子育てや介護、不登校等の課題に連携して取り組むことで、住民にとって効果的な施策を検討・実施することができるという。

また、自然災害をはじめとする緊急時にも、複数の自治体同士で支援し合う強固なBCP(事業継続計画)を構築できることも特徴となっている。特定の被災地で物理的な役所の機能が滞った際に、連携先の自治体のメタバース役所で対応できるほか、復旧・復興時の住民コミュニティの維持・再生などへの活用が可能。

加えて、住民からの問い合わせに対応する業務などを標準化することで、複数自治体による共同利用も可能としている。

これにより、各自治体はサービス利用料を抑えながら、場所や時間の制約を減らした形で、行政サービスを住民に提供できるという。また、住民との交流会などについて、複数の自治体が企画・運営上の課題を持ち寄って解決を図ることで、利用自治体の運用負荷を軽減でき、財政的な負担を抑えつつ充実したサービスの提供につなげるとしている。

メタバース役所の価格

価格は参加自治体に共通の空間・サービスを提供する最大同時接続数50人の「共同利用モデル」で、初期費100万円/月額62万5000円、共同利用モデルの基本機能に加え、自治体ごとにカスタマイズした空間・サービスを提供する最大同時接続数1000人の「個別利用モデル」は都度見積もりとなっている。

DNPは、メタバース役所の運用と関連サービスを含め、2028年度に10億円の売上を目指す。今後も、メタバース役所の提供を通じて把握した利用者ニーズに対応し、継続的にサービスの機能を改善・強化することで、自治体のDX推進を支援していく考えだ。