NECは7月16日、3D-LiDAR(Light Detection And Ranging)技術を用いて遠方から高精度に潮位を測定する技術を開発したことを発表した。これにより、地震などの災害で津波が発生した際、潮位の計測機器を設置した場所で地盤隆起・沈下が起きても、それらの影響を受けにくく継続的な潮位の把握が可能となる。
NECは6月に東京港で同技術を使った実証実験を行い、遠方の潮位を高精度に測定できることを確認した。
技術開発の背景
津波が発生した際に潮位の変化を迅速かつ正確に把握することは人命を守るために重要となる。現在の電波式やフロート式の潮位計測システムは測定可能距離が20m程度のため、検潮所を海岸線に設置して海水を引き込んで検潮儀を水面の直上に設ける必要があるが、地震で地盤が隆起・沈下すると潮位の測定が困難となる。
実際に2024年1月の能登半島地震では地盤隆起により計測不能となり、計測の再開までに時間を要したという。
NECが新たに開発した新技術
NECが新たに開発した技術では、3D-LiDARによる赤外線レーザー光を海上の浮標(ブイ)に照射し、反射光を捉えて距離を計測する。最先端の長距離・大容量光送受信技術(コヒーレント受信技術)を活用した長距離3D-LiDARにより超高感度な光受信を実現し、遠方から物体の3次元点群データを取得可能となった。
検証では陸上500m遠方の物体の高さ計測を実現していたが、今回の実証で初めて海上60m遠方の潮位を2cm程度の誤差で測定することに成功した。
さらに、取得したデータにクラスタリング処理(データ間の類似度に基づいてデータをグループ分けしていく手法)を行い、ブイの形状と周辺地形を高精度に分類し位置補正を行う技術を開発した。
これによりさまざまな場所や角度から計測可能となり、場所を選ばずに3D-LiDAR機器を設置できるようになったという。
今後の展望
これらの新技術により、地盤の隆起・沈下の影響を受けにくい場所に検潮所を設置できるようになり、災害に強く継続的な潮位の把握が可能となる。また、可搬型で設置場所の自由度が高いため、設置コストの低減と設置時間の短縮が実現するとしている。
NECは今後、測定可能な距離を数100m程度に延長するとともに、3D-LiDARによるデータと周辺の地図情報を照合して測定精度を向上するなど開発を進め、2025年度内の実用化を目指す考え。