【財務省】37年ぶりの円安水準に、気の抜けない対応迫られる

鈴木俊一財務相の夏休みは〝お預け〟になるかもしれない。

 経済財政運営の指針「骨太方針」の閣議決定や財務省幹部の夏の定期人事を終え、鈴木氏も本来ならば他閣僚とともに休暇モードになるはずが、外国為替市場では円安基調が続き、当面は気が抜けない日々になりそう。岸田文雄首相の自民党総裁の任期満了に伴う9月の総裁選では鈴木氏が所属する麻生派の動向が焦点になる見通しで、鈴木氏の動向にも注目が集まりそうだ。

「(為替は)安定的に推移することが望ましく、急激な、しかも一方的な動きは望ましくない」。6月27日午前、外国為替市場で対ドルの円相場が一時1ドル=160円台後半まで下落、37年半ぶりの円安・ドル高水準を付けたことに関し、鈴木氏はこう述べた。

 また、「特に経済に対する影響は強く懸念している。高い緊張感を持ってこの動きの背景も分析し、必要に応じて必要な対応をとっていく」とも語り、円安をけん制した。

 節目となる160円台までの下落を受け、市場では政府・日銀による為替介入への警戒が強まっている。

 為替を巡る政府・日銀の対応については、4月26日の記者会見で植田和男日銀総裁が円安を〝容認〟したのを機に円が急落。財務省が約10兆円規模の為替介入を実施し、家計を直撃する「悪い円安」を食い止めた形だが、政府と日銀の連携不足が露呈したことは記憶に新しい。

 国際金融の世界では「そもそも為替介入は円安を止める手段としては悪手」(元財務官)といわれる。政府は6月に定額減税を実施し、さらに8月使用分から電気料金の補助再開を決めたが、円安基調が長期化すれば物価高がさらに進み、政府の負担軽減策の効果は薄まりかねない。足元の経済の動向は9月の自民党総裁選の行方に影響するだけに、鈴木氏の存在感は否応なしに高まるだろう。

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