菌ケアのKINS、5億円を資金調達 「ポリアミン乳酸菌」の商業化などに活用

総合的な菌ケアサービスを展開するKINSはこのほど、鈴与、NIPPON EXPRESSホールディングスのCVCであるNXグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、パナソニックのCVCであるPC-SBI投資事業有限責任組合、楽天グループのCVCである楽天キャピタル、静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合より、合計約5億円の資金調達を実施した。「ポリアミン乳酸菌」の商業化B2C事業、およびB2B事業の成長に向けた取り組み強化などに活用する。

KINSは、1000兆個と言われる全身の菌(常在菌)をケアすることを提案し、研究、開発、販売までを一気通貫して行う、マイクロバイオームに特化したヘルスケア企業。

近年、細菌叢(マイクロバイオーム)研究の進展により、腸内・皮膚・口腔内等の菌と疾患の関係が明らかになりつつある。世界各国で腸内細菌を活用した先進医療が開始されるとともに、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患や精神疾患などさまざまな疾患に対するマイクロバイオーム医薬品の開発が急速に進んでいる。

KINSは、累計10万人超のユーザーを抱え、皮膚・腸内・口腔内などマイクロバイオームがかかわる部位を対象として20以上のプロダクトを展開するコンシューマープロダクト事業、日本にて2院の動物病院・シンガポールにて1院のヒト向けクリニックを展開するクリニック事業、約2万検体にものぼるヒト皮膚常在菌を郵送で回収し解析する独自の菌バンクプラットフォームを活用した研究をかけ合わせる独自のビジネスモデルを通じて、疾患・症状への効果が期待される皮膚、及び腸内の複数の独自菌獲得に成功している。

直近では、ポリアミンの合成能力が高い特殊な乳酸菌を複数入手しており、これらの菌をプロバイオティクスとして有効利用することでアンチエイジング他の健康効果をもたらすプロダクトの開発や、菌自体の原料 としての販売準備を進めている。

このほど、鈴与、NIPPON EXPRESSホールディングスのCVCであるNXグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、パナソニックのCVCであるPC-SBI投資事業有限責任組合、楽天グループのCVCである楽天キャピタル、静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合より、合計約5億円の資金調達を実施した。これにより、KINSの累計資金調達額は約35億円となった。

今回調達した資金は、ポリアミン産生乳酸菌の商業化、研究ケイパビリティの強化、コンシューマーヘルスケア事業の強化に活用する。ポリアミン産生乳酸菌の商業化においては、KINSの独自菌をB2C事業、およびB2B事業の両方で世の中に届けるための研究、PR活動、体制構築に投資する。

研究ケイパビリティの強化においては、マイクロバイオーム創薬研究の本格化に向けた研究員の採用・ラボの拡張・設備の購入など、研究開発能力強化のための投資を行う。コンシューマーヘルスケア事業の強化においては、自社EC、およびECモールチャネルにおけるさらなる販売促進、ユーザーの獲得を目指す。

これまでKINSは、菌をケアすることを世の中の当たり前にし、慢性疾患/症状の根本解決に貢献することを目標に、B2C事業を中心にソリューションをユーザー、および患者に提供してきた。

一方で、何らかのアレルギーを抱える人は日本人の約2人に1人とも言われているなど、慢性疾患/症状は現代の大きな課題であり、日本のみならず、成長著しいアジアにおいても経済発展に伴ってその増加が社会問題になってきている。そして多くの慢性疾患/症状に、腸内、皮膚、口腔内他のマイクロバイオームの状態が影響していることが判明してきているとし、今後は、今回株主として参画した事業会社とも連携しながら、自社プロダクト、および独自菌原料を広く世の中に届けるため、B2C事業に加えてB2B事業での展開を加速していくとしている。

具体的には、鈴与、静岡キャピタルとは、KINSのポリアミン産生乳酸菌の販路開拓において、パナソニックとはマイクロバイオームに着目した商品の共同開発・販売において、NIPPON EXPRESSホールディングスとは菌検体の国際輸送や独自菌のバックアップ保管・輸送において、シナジーを追求する。加えて、楽天グループとの連携を通じて、好調のECモール店舗を含むB2C事業のさらなる拡大を図る。

▲KINS 代表取締役社長 下川穣氏

今回の資金調達にあたり、KINS 代表取締役社長 下川穣氏は、「今回の資金調達により、私たちの研究成果を広く社会に提供する体制がさらに強化されたと感じております。KINSに新たに投資いただいた皆様に感謝し、様々な市場においての事業シナジーの実現を通じてポリアミン産生乳酸菌をはじめとする独自の菌原料及びKINSのソリューションを世の中に届けていきたいと考えております」とコメントした。

【引受先コメント】

・鈴与 代表取締役社長 鈴木健一郎氏

昨今、社会的な健康課題の一つとなっている慢性疾患に対して予防療法・根本治療が求められているなか、マイクロバイオームに着目した独自の技術と優れた研究開発力によって根本的な解決を目指すKINS社の挑戦に大きな期待を寄せるとともに、当社グループの経営資源との連携によってKINS社が取り組む社会課題の解決と同社事業発展の一助となる支援ができれば幸いです。

・NIPPON EXPRESSホールディングス 常務執行役員 大辻智氏

慢性疾患などを根本的に解決するという思いのもと、日本国内にとどまらずアジアの複数国で事業展開をされているKINS社に資本参画させて頂きました。海外クリニックから国内のラボや保管施設へと、厳格な温度管理が求められる菌検体等の輸送をEnd to Endで担うことにより、KINS社のグローバル展開を積極的に支援してまいります。 また、KINS社と共にマイクロバイオーム領域のロジスティクスソリューションを共創し、ヘルスケア業界のお客様にさらなる価値を提供していきたいと考えております。

・パナソニック CVC推進室 室長 郷原邦男氏

今後のビューティ・ヘルスケア事業においては、KINS社が保有する菌ケアに着目したスキンケアに加え、ヘアケア・サプリメントなどの剤に対する深い理解が、新たに顧客満足度の高い商品・サービスを開発する上で重要と考えています。お互いの強みを引き出し、より多元的な課題へのアプローチを目指していきたいと考えています。

・楽天グループ 副社長執行役員 高澤廣志氏

菌の研究とその応用が各領域で進む中、KINS社は、菌に関する豊富な知見を活かしたB2Cの商品展開に加え、クリニック・ラボも運営しているという点で非常にユニークなビジネスモデルだと考えています。楽天グループが運営するマーケットプレイスでの販売支援を含め、今後の事業発展に向けて積極的に連携してまいります。

・静岡キャピタル 営業部シニアディレクター 山内栄二氏

慢性疾患へ真摯に向き合いここまで事業を拡大されてきた下川代表をはじめとするKINSチームの皆様とご一緒できることを大変嬉しく思っております。KINS社はマイクロバイオーム研究で国内をリードする存在であり、弊社としても商品開発や独自菌の研究で大きなポテンシャルを感じて出資させていただきました。静岡県は医薬品や健康食品の生産拠点が数多く存在しています。 静岡キャピタルとして地域の企業様と連携しKINS社のご支援を行ってまいります。