SmartHRは7月1日、オンラインとオフラインのハイブリッドで説明会を開催し、約214億円のシリーズEラウンド実施することに加え、情報システム部門が重視するID管理領域への新規参入や、労務管理・タレントマネジメントの新プロダクトを発表した。
プロダクト開発や営業・マーケティング投資を強化
資金調達については、カナダの年金基金であるオンタリオ州教職員年金基金(Ontario Techers' Pension Plan、OTPP)のレイターステージおよび成長投資部門のTechers' Venture Growth(Ontario Teachers')、米大手投資会社のKKRをリード投資家とし、既存株主・新規投資家を引受先とした第三者割当増資、既存株主による株式譲渡(セカンダリー取引)により、約214億円のシリーズEラウンド実施すると明らかにした。
今回のラウンド調達により、マルチプロダクト開発、営業・マーケティング投資の強化、新規事業開発、機能拡充・人材獲得を目的としたM&AやAIなどの新技術への投資にも取り組む考えだ。
SmartHR 代表取締役CEOの芹澤雅人氏は「当社は、これまで労務業務の効率化×タレントマネジメントという切り口で入社から退職まで、さまざまなシーンで人事担当者や従業員の業務効率化に取り組んできた。これにより必要なデータが自然と集まる仕組みとなり、人事データをいつでも活用できる状態を作り出している」と述べた。
“従業員データを中心にすべての業務につながる”を目指す、SmartHR
近年の国内HRテッククラウド市場は、2023年には1100億円から2027年には3200億円の市場に拡大することが見込まれており、2023年における労務管理クラウド市場の出荷金額は前年比150%に成長している。
芹澤氏は「労務管理クラウド市場で当社はシェアナンバーワンであり、労務管理クラウドのSmartHRには6万社が登録している。タレントマネジメントプロダクトの併用も拡大傾向にある。また、グローバルに目を向ければ、国内の人材投資は伸びしろが大きいものの、日本は諸外国と比べて人的資本への投資は遅れているため、今後は人手不足・生産性向上のニーズに伴い拡大が期待されている」と話す。
こうしたことから、タレントマネジメント市場は急成長しており、先行プレイヤーは1400~3700社ほどが有料顧客をかかえているため、SmartHRではタレントマネジメントのプロダクトを継続的に拡大していく考えだ。
同氏は「DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速、労働人口の減少、働き方の多様化をはじめとした外部環境の変化に対して『従業員データを中心にすべての業務につながる』を目指す。これまでの人事労務に加え、情報システム領域や従業員領域、プラットフォーム領域に裾野を拡げていく」と力を込める。
新領域のプロダクト
資金調達によりマルチプロダクトを目指す同社では、新領域へのプロダクトしてID管理の「IdP機能(シングルサインオン)」「従業員ポータル」「勤怠管理」を発表。
これらのプロダクトは、芹澤氏が話すようにSmartHRの導入企業が労務管理機能で収集した従業員データをバックオフィス業務に活用できる状態を目指し、開発を進めている。労務管理機能・タレントマネジメント機能を活用する人事・労務領域、SmartHRと外部サービスとのスムーズな連携を強化するプラットフォーム領域のほか、外部サービスの活用を効率化する情報システム領域や従業員に対し確実な情報共有を実現する従業員領域へと広げていくという。
IdP機能は、SmartHRから各企業が導入しているさまざまな外部サービスへワンクリックでログインでき、企業における導入クラウドサービスの増加に伴って発生する、情報システム部門が抱えるセキュリティやパスワード管理の課題を解決するという。
具体的にはSmartHRで保有している情報を用いて、必要な人に必要な外部サービスへのログイン導線を表示し、SaaS(Software as a Service)を利用する際のパスワードやログインURLに関する手間を削減することが可能。今後、SmartHRのIDを用いて外部IDの作成や入社、退職などの従業員ライフサイクルに合わせた自動化などの機能を計画し、今夏に提供開始を予定している。
従業員ポータルは、SmartHRにログインした従業員の業務の入口になる機能。各種手続きに関する申請業務や社内のお知らせ確認のほか、IdP機能を通じた外部アプリケーションへのスムーズなログインなど、さまざまな業務を集約。
情報収集時間の削減や社内のタイムリーな情報共有を可能とし、従業員と人事・労務担当者の生産性向上が図れるという。今秋の提供開始を予定している。
勤怠管理は、SmartHRの従業員データと連携し、人事異動や組織変更に伴う従業員データと勤怠管理システムの二重管理の必要がなく、締め作業をはじめとした担当者の業務や従業員の打刻・申請など業務負担の軽減が図れるというものだ。
提供開始は一部のユーザーに対しては今秋以降に予定し、SmartHRを検討中もしくは新規ユーザーには来年を予定している。