【急成長プロテインD2Cの次の一手】武内製薬 小倉由渡社長「売上72%増、今後は利益向上に注力」

化粧品や健康食品のOEM・D2C事業を展開する武内製薬は今後、利益と従業員の満足度の向上に注力していく考えだ。2024年3月期の売上高は前期比72%増の38億円で着地した。堅実に成長を続ける同社の小倉由渡社長に今後の展望について聞いた。

<利益拡大へ注力>

2024年3月期の売上高も前期を大幅に超えることができた。一方で利益に関しては、黒字ではあるものの前期から横ばいで推移した。今後は売上高の成長を重視する方針は変わらないが、より利益の向上に力を入れていきたい。

これまで当社では売り上げ最大化を目的に置き、健康食品・化粧品を中心にECモール上における売上獲得・シェア拡大を続けてきた。一方でモールドリブンの戦い方では、昨今の原料高騰や円安の進行、物流問題などの外的環境変化の影響もあり、利益を出しづらい状況となっている。

利益を創出するためには、原価率や販管費率を見直す必要がある。原価率の抑制に関しては、原価そのものを下げることが難しい状況のため、適切に価格に転嫁するしかないと考えている。また販管費率の削減に関しては、物流費用の削減が最も企業努力で解決できる箇所だと感じている。2024年には「物流問題」が来ることが以前から騒がれていたが、現状としては送料を大幅に下げることは難しい。だが、保管費に関しては、改善することができると考えている。具体的には社内の適正在庫の考え方を見直すことで、保管費を抑えていきたい。

<ブランディングが急務>

当社の主力商品であるプロテイン「THE PROTEIN(ザプロ)」の主原料であるWPC(ホエイプロテイン)は仕入価格が不安定であり、原価そのものは調整不可能だ。そのため、当社としては事業継続のために価格改訂を実施せざるを得ない。併せて、お客さまには価格以外で価値を感じていただく必要がある。そうなると今まで以上に「THE PROTEIN」に関して、「ブランディング」が重要になると考えている。

プロテインはすでに市場に多くの競合が存在し、どの企業のプロテインも味・品質ともに向上してきており、他社との差別化が難しくなってきている。今までは主な提供価値として「安さ」「コスパ」を顧客便益としてきたが、このままでは事業継続そのものが難しい状況だった。

 

価格改定を実施する中で、「安さ」以外で商品を手に取ってもらえる「ブランディング」が急務だと考えている。そこで当社の「THE PROTEIN」が提供したいブランド価値は「多様な商品群・豊富なフレーバーの種類があること」、「ザプロには自分のお気に入りのプロテインが必ずあること」だ。

顧客にアンケートを実施したところ、フレーバーの種類の多さに好評いただいている方が多いことが分かった。「THE PROTEIN」のブランドコンセプトは必ずしもトレーナーや女性向けだけでなく、特定のジャンルに特化せず、老若男女に愛飲いただくことを目指している。

今秋には、マグケーキ専用フレーバー「あんバター風味」のプロテインをシーズン限定商品として販売予定だが、その季節でしか味わえない季節限定プロテインなどの販売を強化し、「『THE PROTEIN』に来たら、私好みのプロテインが見つかった」と思ってもらえるようなブランドに成長させていきたい。

<従業員満足度に焦点>

会社の成長のためには、働いてくれる従業員が何よりも大切だ。そのため、会社として福利厚生の拡充も重要事項だと考えている。先日、初めて従業員向けにエンゲージメントサーベイを実施し、さまざまな意見を吸い上げた。その意見を確認し、今回新たな福利厚生を設けることとした。主に①社内目安箱の設置 ②住宅補助の強化 ③夏期休暇制度の導入――を実施する。

社内目安箱の設置に関しては、従業員数も非常に増えてきた中で、従業員の意見を適切に吸い上げることが難しくなってきたと感じている。そこでオンラインで意見を投稿できるフォーマットを用意し、気になったことや改善を要求したいことなど、何でも気軽に投稿できるようにした。

また住宅補助に関しては、すでに会社から2駅圏内に住んでいる社員には2万円の住宅補助を支給しているが、今後は会社から3駅圏内に住んでいる社員には3万円を支給することにした。また夏期休暇に関しても、4月〜10月の間に3日間休みを取得できる夏季休暇の導入を決定し、従業員のワークライフバランスをサポートできるようにした。今後も従業員から寄せられた声にしっかりと目を向け、改善できることは改善し、社員全員に楽しく働いてもらいたい。そうして武内製薬を健康的にさらに大きく成長させていきたいと考えている。

【記者の目】

ここまで多様なプロテインを販売する企業はあまり見かけない。今秋には、マグケーキ専用フレーバー「あんバター風味」のプロテインをシーズン限定商品として販売予定だという。プロテインはトレーニー専用商品ではなく、女性も気軽に摂れる商品として販売していく。武内製薬がどこまで一般消費者を獲得できるのか、非常に期待したい。