金融庁が三菱UFJ銀など3社に「情報無断共有」で行政処分

銀行と証券の情報共有のあり方はどうあるべきか─。

 2024年6月14日、証券取引等監視委員会は三菱UFJ銀行、グループの証券2社の3社に対し、行政処分を科すよう金融庁に勧告した。

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 金融商品取引法では、同グループの銀行と証券との間で、顧客情報の共有を制限する「ファイアウオール規制」があるが、3社は19年から23年にかけて、顧客である企業の同意を得ないまま、事業統合などの非公開情報を銀行と証券との間で共有するという違反があった。

 例えば、顧客企業が保有する政策保有株式の売却を三菱UFJ銀に伝えた際、証券2社には伝えないように複数回伝達したにもかかわらず、情報提供が行われていた。当時の銀行の専務執行役員が三菱UFJモルガン・スタンレー証券の代表取締役副社長に伝え、この情報を利用して、引き受け契約を勧誘した。

 また、当時の銀行の代表取締役は、不適切な情報提供が行われた可能性を認識したが、専務執行役員から「顧客は黙認している」との報告を受け、違法性のある行為だと認識しなかった。

 他にも、銀行は有価証券の引き受け業務が法令で認められていない中、企業が融資や債券発行による資金調達を銀行に要請した際、三菱UFJモルガン証券との取引拡大などを交渉。

 監視委は「非公開情報を利用するという顧客軽視の営業姿勢は問題。グループ収益の最大化を目指す際、こうした事態が予見されるという観点でのモニタリング、内部管理体制が十分ではなかった」と厳しく指摘。

 この勧告を受けて金融庁は、6月24日に行政処分を発表した。三菱UFJ銀行と証券2社には業務改善命令、持ち株会社である三菱UFJフィナンシャル・グループに対しては報告徴求命令を出した。

 欧米では銀行と証券の壁はなく、国際競争上も問題だという銀行側の意見もあり、これまでファイアウオール規制は緩和の方向で議論が進んできた。22年6月からは上場企業で緩和されたが、今回の事案でこの議論の流れが停滞する可能性もある。

 三菱UFJ銀はモルガン・スタンレーとの提携関係を生かした銀・証の連携で実績を挙げてきた。すでに再発防止策の策定に動いているが、今後一層の情報管理の徹底が求められる。