マクニカは6月18日、再生可能エネルギーのHTT「作る(発電)、貯める(蓄電)、使う(制御)」で無駄なく電力を使うために必要となる「エネルギーマネジメントシステム」に関するメディア説明会を開催。同社の取り組みについてデモを交えた紹介などを行った。

エネルギーマネジメントシステムとは、エネルギーの使用状況を可視化し、照明や空調、設備機器の稼働を制御することでエネルギーの運用を最適化するためのシステム。同社では、ペロブスカイト太陽電池で発電を行い、鉛蓄電池で蓄電し、省エネを実現する各種テクノロジーによって電力消費を効率化といった電力全般の取り組みのみならず、ごみの資源循環も含めた無駄なくエネルギーを利用するサイクルの確立を通して、再生可能エネルギーの「作る・貯める・使う」を実現するとしている。

  • 自家発電自家消費都市のイメージ図

    自家発電自家消費都市のイメージ図 (提供:マクニカ)

2023年は国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰の時代が訪れた」と表現したように、世界各地で異常気象が発生し、2024年もサウジアラビアやインドで50℃を超す酷暑を記録しているほか、中国でも干ばつが起こり、日本でも梅雨入りが遅かったにも関わらず梅雨明けが早くなるなど、気候変動に対する世界規模での対策が求められるようになっている。

こうした気候変動を引き起こしている要因の1つとして、化石燃料の使用による二酸化炭素の排出量の増加が考えられており、化石燃料から二酸化炭素を排出しないエネルギーへの切り替えは必要不可欠で、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする「カーボンニュートラル」を推進することを表明した国・地域は127か国に上っている。

日本においても、温室効果ガス排出量の全体の85%がエネルギー起源によるもののため、温室効果ガスの排出を抑えられる再生可能エネルギーへの転換が必要だとし、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことが掲げられており、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減を目標に産官学一体となった取り組みが進められている。この流れの中で同社は、化石燃料の「使う・捨てる」から、再生可能エネルギーの「作る・貯める・使う」へと社会行動を変化させていくことが必要だと強調する。

  • 再生可能エネルギーへの注目

    再生可能エネルギーへの注目 (提供:マクニカ)

エネルギーマネジメントシステムを活用した電力の循環に対して同社は、「エネルギーの地産地消」「不安定な再生可能エネルギーを活用するための蓄電池」「容易に導入でき効果の高い省エネ手段」が必要であるとする。しかし、大規模な都市においては発電場所が少なかったり、導入が容易な蓄電池が少なかったり、消費電力の多くを占める冷暖房機器への対策が必須だったりと課題も多いと指摘。

そうした状況の中、電力消費比率の高い冷暖房や冷蔵、冷凍などに使用する室外機の外装や室外機周辺の床面に塗るだけで、消費電力の削減ができ、それにより二酸化炭素排出量の削減にもつながる遮熱断熱塗料「マクニカット」の販売を4月より開始したとする。

  • マクニカットのデモの様子

    マクニカットのデモの様子

マクニカットは太陽からの放射線による熱交換を防ぐための遮熱と熱を伝えない断熱を併せ持った塗料で、太陽エネルギーの90%以上を反射し、内部への熱の侵入を抑制する「反射機能」、熱の侵入を防ぐ「断熱機能」、柔軟性があり200%の伸びに追従することで塗装面のひび割れ(クラック)を防止する「伸縮機能」を持ち合わせている。建物の外壁塗装にも活用可能とするほか、室外機の外装表面への塗装、マクニカットを塗装した省エネカバーの設置、室外機周辺床面への塗布により、年間の消費電力を約10~15%カットすることができるようになるという。

  • マクニカットのデモでも、マクニカットが塗布された左側は温度上昇が抑えられている

    マクニカットのデモでも、マクニカットが塗布された左側は温度上昇が抑えられている様子が見て取れた

仕組みとしては、トップコートと塗装下地の間に中空ビーズが蜂の巣状に形成され、それが塗料塗膜として熱を吸収し放熱、熱貫流を抑えることで、室外機への熱の侵入を防ぐというもの。マクニカットは高温時も低温時も効果があり、白熱灯照射による同社が行った実験では、一般塗料が塗布された試験体表面の温度は80.9℃だったのに対し、マクニカットが塗布された表面温度は49.6℃と、マクニカットの方が31.3℃低いという結果を得たとする。また、試験体の上に氷を置いた時の実験では、一般塗料が塗布された試験体表面の温度は2.3℃だったのに対し、マクニカットが塗布された表面温度は10.1℃とマクニカットの方が7.8℃高いという結果が得られたという。

  • マクニカットの仕組み

    マクニカットの仕組み(提供:マクニカ)

なお今後は、製造施設や商業施設など大型室外機を大量に有する場所への導入によりエネルギー消費の削減を目指すとし、他のソリューションを含めて開発を進めていくことで、エネルギーマネジメントシステムの活用による無駄なく電力を使う社会サイクルを実現したいとしている。