【EC売上22%増の要因は?】パル 取締役 堀田覚氏「個の創意工夫を重視」

パルグループホールディングス(HD)の2024年2月期の連結決算におけるEC売上高は、前期比22.3%増の483億9700万円だった。パルの取締役 専務執行役員 プロモーション推進部部長 WEB事業推進室室長 コミュニケーションデザイン室室長を務める堀田覚氏は、「当社のもともとの企業文化として、”個の創意工夫”を重視している」と語る。

<総フォロワー数は1600万人>

SNS上の施策が、ECや実店舗での売り上げにつながっている。当社では約1800人のスタッフが、各SNSアカウントで、継続的に情報発信を行っている。全アカウントを合計したフォロワー総数は約1600万人。フォロワー数が10万人に到達するスタッフも、1~2人ではなく一定数いる。フォロワー数が20万人のスタッフも約10人いる。10万人以上のフォロワーを抱えるスタッフは、40~50人いる。各スタッフが蓄積した、SNS運用のノウハウは社内で共有している。

SNS関連だけでなく、各ブランドの好調な取り組みや情報をデータ化し、全体に共有する。そうすることで、個々のブランドが最良の選択をしやすい状態にしている。当社にはもともと、”個の創意工夫”を重視する企業文化がある。スタッフ一人一人の個性や、創意工夫を大切にしている。

SNSの運用も、一定のルールを設けつつ、スタッフの自主性を重視して運用を任せている。「パルクローゼット」では、それぞれのブランドが創意工夫しつつ、それぞれの強みを発揮・実現できるようなプラットフォーム・仕組みを用意している。

<生成AIスタッフが売上を作る>

「春のパルクロウィーク(4月4~16日)」に合わせ、顧客一人一人が「自分の”似合う”」を見つけられるAIサービス「NIAU AI(ニアウエーアイ)」を本格リリースした。①ファッションメイト ③AIフェイスチェンジ ③AI骨格診断――という3つのAI機能で構成している。

「ファッションメイト」は、スタッフのインスタグラムの投稿を、AIが分析・学習し、本人さながらの投稿やコミュニケーションを実現するサービスだ。AI接客を通じて、売り上げも上がるようになっている。

スタッフAIによる接客経由で商品が購入された場合、学習元のスタッフにもインセンティブを提供する。スタッフが、自身のAIをチューニングすることもできる。チューニングすればするほど、AIスタッフの提案・接客の精度は向上していく。

今後、さらに各スタッフの個性や創意工夫が表現できるAIに発展させたい。

<AIは必須の時代に>

画像生成AIを活用した「フェイスチェンジ」では、コーディネート画像の顔を、ユーザー自身の顔に差し替えられる。利用者の購入率は、非利用者に比べ明らかに高い。定性的なアンケートでも、機能の利用が購入につながったと分かった。購入の後押しになっている可能性がある。

「AI骨格診断」では、スマホで撮影した写真をもとに、AIが骨格を診断する。「骨格」を軸にした特集は、当社の鉄板企画だ。こうしたもともとある企画やコンテンツを拡張して、顧客がより楽しめるように改め、同機能をリリースした。

AIの活用は、選択肢の一つだと捉えている。一方で、AIが必須の時代になってくるとも考えている。今後どう活用していくかが重要だ。積極的に挑戦し、経験を積み、提供する機能をブラッシュアップしていきたい。

【記者の目】

同社のスタッフのSNSは、強制ではなく、「やりたい」人が運用しているのだそうだ。投稿内容も、”個人が心から良いと思ったものを発信する方が、商品の魅力がより伝わる”との考えのもと、各自に任せ、スタッフの日々のライフスタイルを発信しているのだという。個人の創意工夫を重視して発信していく企業文化が、顧客の心をつかみ、成長の一因となっているようだ。