メタップスホールディングスとビヨンドは6月17日、クラウドインフラ市場に関するメディア勉強会を開いた。勉強会は二部構成で、前半は3大クラウドについて、後半は監視ツールについて解説が行われた。本稿では、後半でメタップスホールディングの是永総一郎氏が語った「監視SaaSの世界」の内容をレポートする。
勉強会前半:「AWS・Azure・Google Cloud、3大クラウドの特長をエンジニア目線で比較」
インフラ監視ツールのトレンド
監視とは、あるシステムやそのシステムのコンポーネントについて、振る舞いや出力を確認し続ける行為を指す。従来の監視においては、CPUやメモリ、ストレージなどのメトリクスを収集して閾値を設定する仕組みが使われていた。
シンプルなシステムの監視はこうした仕組みでも対応できていたが、システムの複雑化に伴って「オブザーバビリティ」という新しい概念が提唱され始めた。オブザーバビリティではメトリクスに加えて、ログやトレースも活用する。ユーザーの操作を追える粒度でデータを収集する。
トレースとは、アプリケーションのさまざまなコンポーネントを通過するリクエストの全体的な経路を表す。マイクロサービスのように、アプリケーションを構成するシステムが増えたことにより誕生した概念だ。
監視にはもう一つのトレンドがあるという。それは、機械学習を取り入れて通常とは異なるシステムの状態を検出する仕組みだ。これにより、不具合の見逃しを軽減し、問題が小さなうちに対処できるようになっている。
代表的な監視ツールの特長
是永氏はDatadog、NewRelic、Mackerel、Prometheusの4つの監視ツールについて、その特徴をそれぞれ説明した。
Datadog
米Datadog社が提供するDatadogは、ダッシュボードの豊富なカスタマイズ機能や充実したインテグレーション機能を備える。さまざまなSaaSからデータを収集でき、インフラやアプリケーション、ログ、ネットワーク全体を一元管理可能。APM(Application Performance Monitoring)機能も強みとしている。
是永氏はDatadogを選定する際の基準として、「インフラやアプリケーション、ログを統合的に管理したい場合や、ダッシュボードを充実させたい場合、外部ツールも一元的に管理したい場合、小規模なシステムの場合にDatadogは有効」と紹介した。
同氏は「Notebook機能により調査時のデータを可視化できるので、共有が楽になる点が推しポイント」と、実際にサービスを使用した感想も語っていた。
NewRelic
NewRelicは、詳細なトレースとRUM(Real User Monitoring)機能を備え、APMデータのリアルタイム分析と可視化が可能。アプリケーションのパフォーマンス監視を強みとし、分析のための機能が豊富だという。
NewRelicを選定する際の軸としては、アプリケーションのパフォーマンス監視が重要な場合、強力なRUMが必要な場合、高度なデータ分析能力が求められる場合、少人数で監視システムを使用する場合、などが挙げられる。
Mackerel
Mackerelはメトリクスやログなどの基本的な監視機能とシンプルなインタフェースを備える。同サービスは国内企業のはてなが手掛けているため、日本企業向けのサポートやドキュメントが充実している。シンプルで使いやすいデザインが特徴。
「直感的に使えるツールを求める場合、日本語サポートや日本向けドキュメントを重要視する場合、コストを抑えたい場合には有効な選択肢となる」(是永氏)
Prometheus
Prometheusは他サービスと比較して強力なログ検索機能や、多数のエクスポーターによるメトリクス収集機能を有する。また、Kubernetesの監視も強力。オープンソースで提供され、無料で利用可能な点が特徴。有料のマネージドサービスもある。
システムの規模が大きく自前で監視システムを運用できる場合や、Kubernetesの監視を強化したい場合、無料で強力な監視ツールが必要な場合などに有用とのことだ。