【チャネル戦略を聞く】ヤマダHD 後藤賢志氏「AIハッシュタグ導入、購買率を向上」

ヤマダホールディングスはこのほど、2024年3月期のEC売上高が、前期比で約10%増になったことを明らかにした。EC売上高の実数は非公開ながら、本紙推定で1600億円超。楽天市場やQoo10の売り上げが好調に推移したようだ。楽天では、SOYの総合グランプリを受賞。Qoo10でもアワードを受賞している。ECでは、AIを導入することにより、購買率の向上を実現。売り上げの拡大につなげているという。2023年の振り返りと、今後の展望について、インターネット事業部長の後藤賢志氏に話を聞いた。

<モールが好調に推移>

2024年3月期のECでは、楽天市場を中心に、モールの売り上げが好調だった。自社ECサイトの売上高は、若干前年を割ってしまったが、モールの増収が大きく、トータルでの増収につながった。

昨年は家電量販店の競合各社が、自社ECサイトで苦戦した1年だったとみている。大手を中心に、前年を割ってしまった企業が多い。

当社でも自社ECサイトでは苦戦を強いられていた。そこで2023年9月、家電情報に関するオウンドメディアを立ち上げた。

家電に関する情報はもちろん、今だと省エネに関する情報もよく見られている。オウンドメディアの閲覧数が増えれば、自社ECサイトへの流入数も増える。まだまだ記事数は少ないが、今後も継続して記事数を増やしていきたい。

<自社ECの利便性を>

2023年12月には、自社ECサイトの検索に、AIハッシュタグを導入した。家電は商品数が多岐にわたり、何を基準に選んでいいか分からない人も少なくないだろう。AIハッシュタグを導入したことにより、サイトの滞在時間が伸び、購入にもつながっている。

まだ導入したばかりで、パソコンやスマートフォンでの表示数など、模索中の部分もある。検索が苦手な人でも、使いやすいサイト作りをしていきたい。

モールでの展開においては、各モールの特徴を生かした、販促や在庫管理を行うよう意識している。商品単体まで見ると大きな差はないものの、商品カテゴリーは異なってきている。

楽天市場では、電子レンジなどの調理家電や、理美容家電がよく売れている。一方、ヤフーショッピングでは、デジタル一眼レフや、関連品のレンズ、オーディオ機器がよく売れている。

モールによって掲載商品は変えていないが、各モール用の在庫数は変えている。在庫を一方に偏らせたり、商品によっては共有在庫にしたりし、最も売りやすい方法を模索している。単価は、ヤフーショッピングの方が楽天市場に比べ、2割ほど高い。

<全国展開の強みを>

購入単価でいえば、最も高いのは自社ECサイトだ。配送と設置付きで販売している大型家電が、自社ECサイトの一番の強みだ。全国に実店舗と配送網を持つ当社の強みが生きている。

今後は、家電以外の商品カテゴリーも拡充していきたい。個人的には、アパレルも扱えたらと考えている。

当社ではeスポーツの大会などもやっている。例えば、eスポーツを絡めたTシャツなどを販売できたら、日本だけでなく海外にも需要があるかもしれない。

外国人観光客だけでなく、日本に住んでいる外国人も急増している。そういった人たちの需要も取り込み、誰もが使いやすいECを作り上げていきたい。

【記者の目】

大手家電量販店のECの減収が目立つ中、増収となったヤマダホールディングス。ECへの注力という意味では後発ながら、近年急成長を見せている。実店舗の全国展開によって得られる。配送網やアフターサービスの充実が強みになっている。母体が大きく、人気商品の在庫を潤沢に持てる点も強みだろう。同社のECは、まだ成長途中にも思える。今後も増収が続いていきそうだ。