アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンは6月14日、「加速するAI活用、AIスキルに関するアジア太平洋地域の雇用主および労働者の意識調査」の結果公開に伴い、AI活用動向とAI人材育成の最新動向に関する記者説明会を開催した。

3つのペルソナに対し生成AIトレーニングを提供

アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員サービス& テクノロジー統括本部統括本部長 安田俊彦氏は、「過去3年間、この時期に人材育成の調査結果を公開しているが、毎年、人への投資が重要だと伝えている。われわれは、さまざまな人材が最新のテクノロジーが使えるように、支援している」と述べた。

  • アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員サービス& テクノロジー統括本部統括本部長 安田俊彦氏

同社はクラウドを中心としたトレーニングを提供しているが、昨今は、生成AIや機械学習に対するニーズが高いという。生成AIに関しては、同社の3つの層から成るテクノロジースタックに沿って、トレーニングを提供している。

具体的には、「基盤モデルのトレーニングと推論のためのインフラ」「LLM(大規模言語モデル)・基盤モデルを組み込んだアプリ開発のためのツール」「基盤モデルのトレーニングと推論のためのインフラ」「LLM(大規模言語モデル)・基盤モデルを活用したい構築済みアプリケーション」から、同社の生成AIのテクノロジースタックは構成されている。

安田氏は、人への投資もこの3つのタイプに分けて投資していると述べた。

  • AWSの生成AIのテクノロジースタック

AIスキルによる給与の上昇率が最も大きいのはIT部門

続いて、トレーニングサービス本部本部長 岩田健一氏が、「加速するAI活用、AIスキルに関するアジア太平洋地域の雇用主および労働者の意識調査」の結果、同社のAIに関連したトレーニングを紹介した。

  • アマゾンウェブサービスジャパン トレーニングサービス本部本部長 岩田健一氏

米AWSはAI活用の最新動向と職場におけるスキル習得のニーズを把握するため、日本国内1,600人以上の就業中の社会人と雇用主 500人を含むアジア太平洋地域9カ国の約1万5,000人の労働者と約5,000人の雇用主を対象に調査を実施した。

AIに関する主要な調査結果

同調査では、アジア太平洋地域の雇用主の92%以上が、2028年までに、自組織でAIソリューションやツールを利用するようになるとの予測を示した。

部門別にみると、日本では財務(80%)部門が最もAIの恩恵を受けると回答、これに、IT(79%)、ビジネスオペレーション(78%)が続いた。

また、アジア太平洋地域では雇用主と労働者のおよそ50%、日本では38%が仕事でAIを使うことで生産性を向上できると回答した。

生成AIに関する主要な調査結果

一方、生成AIに関しては、アジア太平洋地域の雇用主の93%、労働者の90%が、日本では雇用主の79%、労働者の71%が、5年以内に活用すると回答した。

アジア太平洋地域の雇用主、労働者ともに95%以上が生成AIを利用することで、イノベーションと創造性の向上、反復作業の自動化、成果の改善など、仕事において少なくとも1つ以上のメリットがあると回答した。

AIと給与に関する主要な調査結果

アジア太平洋地域の雇用主は、AIスキルを備えた労働者には33%以上の給与を上乗せすると回答した。予想される平均給与の上昇幅は国によって異なり、中所得国において最も大幅な昇給が⾒込まれるという。日本の雇用主は、15%高い給与を支払う意向を見せた。

給与の上昇率が最も大きいと考えられているのがIT部門(44%)で、以下、研究開発(41%)、セールス&マーケティング(39%) と続いている。雇用主はAIスキルや専門知識の習得によってあらゆる部門で給与の増額を期待できると回答している。

AIのスキルに関する主要な調査結果

日本の雇用者の68%が、AIのスキルや専門知識を持つ人材の雇用は優先事項と考えているが、82%が採用に苦労していることがわかった。一方、雇用者の68%が、AI人材育成プログラムの実施方法を知らないと回答した。

さらに、日本の労働者の66%は、利用可能なAIトレーニングプログラムに関する知識が不足しており、労働者の66%はAIスキルが役立つ関連キャリアパスについて確信がないと回答した。

  • 日本の雇用者の82%が、AIのスキルや専門知識を持つ人材の採用に苦労している

岩田氏は、今回の調査結果について、「5年以内に従業員が生成AIを使って仕事をするという意識が現れている。また、生成AIをどのような事業に実装して何をしたいかを考えるフェーズに来ている。AIスキルを持つ人の給与を上乗せする雇用主が多いことがわかったが、インドでは AIによって掛け算で給料が上がっていく」」

AI関連のAWS認定資格を発表

今回の調査から、AIに関するスキルを習得すれば給与が上がる状況がある一方、AIに関するスキルを取得する手立てがわからない人が多いことが明らかになった。岩田氏は「AIスキルに関する教育内容を企業に伝えることが大事だと考えている」と語った。

こうした状況も踏まえ、AWSはトレーニングサービスとして、「AWS Skill Builder」「クラスルームトレーニング」「AWS認定」を提供している。

AWS Skill Builder

「AWS Skill Builder」は、無償のデジタルコースや学習プランに加え、有償サブスクリプションによるハンズオンラボを提供している。岩田氏は、「日本特有かもしれないが、初級の手前からのコース、非IT人材向けの入門講座も用意している」と説明した。

「AWS Skill Builder」では、「生成AIの概要」「カスタマイズ(基盤モデルを変更せずに活⽤する)」「チューニング(基盤モデルを変更して活⽤する)」という3つの学習の段階別に、「生成AI」関連のトレーニングを提供している。

AWSクラスルームトレーニング

「AWSクラスルームトレーニング」では、認定講師により、プレゼンテョン、ハンズオンラボ、グループディスカッションを組み合わせた講義が行われる。

今回、新しいコースとして、「Developing Generative AI Applications on AWS」が発表された。同コースでは、生成AIの概要、生成AIプロジェクトの計画、Amazon Bedrockの開始方法、プロンプトエンジニアリングの基礎、Amazon Bedrock とLangChainを使用した生成AI アプリケーションを構築するためのアーキテクチャパターンについて学ぶ。

AWS認定資格

「AWS認定資格」は、FOUNDATIONAL、PROFESSIONAL、ASSOCIATE、SPECIALTYという4つの分野に分かれている。今回、AI関連の認定資格が2つ発表された。

「AWS Certified AI Practitioner (AIF)」は基礎レベルの認定資格で、非IT材向けの資格として創設された。AI、機械学習(ML)、生成AIのコンセプトやツールに精通していることを証明する。

「AWS Certified Machine Learning Engineer - Associate (MLA)」は、技術職向けの認定資格で、AIソリューションやMLソリューションの構築、デプロイ、保守に必要なスキルを証明する。