経済産業省と国土交通省は、次世代自動車の競争力強化に向けた「モビリティDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略」を策定した。通信機能を使ってスマートフォンのようにソフトウエアを更新し、買い換えなくとも性能を向上させる「SDV」と呼ばれる車両について、日本が2030年までに世界シェアの3割を握る目標を設定。日本勢はSDV分野で出遅れが指摘されており、官民を挙げて巻き返しを目指す。
SDVはソフトウエア・ディファインド・ビークルの略称。電気自動車(EV)の普及で、自動車のデジタル化が進んでいることを背景に注目が高まっている。特に自動運転分野では、安全性などを担うソフトを常に最新状態にする必要があり、SDV技術の優劣が競争力に直結するとみられる。
従来の自動車開発は、エンジンなどのハードウエアが車両性能を左右していたが、SDVではソフトウエアを起点にした設計への転換が迫られる。DX戦略は、開発を効果的に進めるために官民が協調して取り組む領域を示した。具体的には、車載半導体の開発やサイバー攻撃対策などを挙げている。
また、多様な企業や人材が交流し、情報共有などを進める「モビリティDXプラットフォーム」を、今秋をめどに設立。27年までに開発・実証環境の整備や要素技術の確立を進め、新たなビジネスモデルを構築する道筋を描いた。
DX戦略は、SDVの世界販売台数が30年に最大4100万台、35年には同6400万台に達すると想定。3割のシェアを獲得するには、30年に1200万台、35年に1900万台を販売する必要があるとした。
しかし、現在は米テスラや中国の比亜迪(BYD)といった海外のEV大手が先行しており、対抗するのは容易ではない。齋藤健経産相は「オールジャパンとしての打ち手を示した。今後、速やかにこの戦略を具体化していく」と意気込んでいる。