Snowflakeは6月3日から、本拠地のある米サンフランシスコで年次イベント「Snowflake Summit 2024」を開催している。4日の基調講演には新CEOのSridhar Ramaswamy氏、共同創業者兼製品担当プレジデントのBenoit Dageville氏、製品担当上級副社長のChristian Kleinerman氏ら幹部が登場し、AI時代の戦略を説明した。
AIを簡単に使える“AI Data Cloud”へ
この一年、Snowflakeは生成AIの時代に向けて大きな改革を進めてきた。最たるものが、年始の新CEO就任だ。Ramaswamy氏は、Snowflakeが2023年5月に買収したAIベースの検索エンジンNeevaの共同創業者。入社から1年足らずでの抜擢となった。
製品としては、2023年11月にLLM、AIモデル、ベクトル検索にアクセスできるマネージドサービス「Cortex」を、今年4月には自社のLLM「Snowflake Arctic」を発表するなど、急ピッチで拡充している。
そして今年のSummitでは、これまでの同社のブランドメッセージ「Data Cloudカンパニー」に「AI」を付けた。Ramaswamy氏は、「AI Data Cloudは、エンタープライズAIの基盤となる。容易さ、効率性、信頼性のあるAIを実現する」と説明。これを可能にしているのが、Dageville氏ともう一人の創業者であるThierry Cruanes氏が創業時に確立した“製品は1つ”という哲学だ、とRamaswamy氏は述べた。
5つの層から成るSnowflakeのアーキテクチャ
続いて登場したDageville氏は、AI Data Cloudとなった現在のSnowflakeのアーキテクチャについて説明した。
Dageville氏はまず、AIアプリケーションの土台には、「データ」「コンピュート」「モデル」「セキュリティとガバナンス」「コラボレーション」という5つの要素が必要だと述べた。そして、Snowflakeはそれを備える、として詳細を説明した。
データ
データはまさに同社のお家芸だ。PDF、画像、音声、動画など非構造化、半構造化、構造化をサポートする上、トランザクションデータと分析データを統合するテーブル「Unistore」、そして「Apache Iceberg」のネイティブサポートなどによりほぼ全てのデータを扱うことができる。
データを保存するだけでなく、処理できるのも特徴で「継続的かつインクリメンタルな方法で、構造化データと非構造化データをまたいだパイプラインも構築できる」とDageville氏は話した。すでに「生動画と直接やりとりするチャットボットを数時間で構築した」などの事例もあるという。
コンピュート
コンピュートは、創業時からの設計でデータと切り離されている。Dageville氏は、「Snowflake Dataflow Engine」と「Snowpack Container Services」により、オンデマンドでCPUおよびGPUにアクセスし、独立して拡張できると説明した。
特に、2023年のSummitで発表したSnowpack Container Servicesは、コンテナ化された任意のサービスをAI Data Cloud内で実装できるもので、「AIアプリ向けのカスタムフロントエンド、分散された機械学習トレーニングなど、さまざまなユースケースが考えられる」と述べた。
モデル
モデルでは、NVIDIA、Mistral、Meta、Rekaなどとの提携に加えて、自社のLLMとなるArcticを加えた。Arcticは「SQLコードの生成などの複雑なエンタープライズワークロード用」と位置づけられている。検索ユースケースを得意とするエンベッディングだけでなく、汎用のLLMでも利用できると続けた。独自のアーキテクチャにより、Grokなどと比較するとトレーニングや推論を少ないトークンとパラメータで行うことができるという。
セキュリティとガバナンス
セキュリティとガバナンスとしては、Cortexを利用することでデータを移動させたり、外部システムにアクセスしたりすることなく、主要なモデルにアクセスできる、とDageville氏は説明した。
また、開発フレームワークのSnowparkでも、クラスタとコンピュートツールを分離することでセキュリティを確保するなどの仕組みを持つという。
コラボレーション
コラボレーションは、「Native Apps」「Snowflake Marketplace」などの機能が実現するもので、「データ、モデル、AIアプリをクラウド、リージョンを超えて安全に共有できるのはSnowflakeだけ」とDageville氏と胸を張った。
これらの特徴を説明した後、Dageville氏は「Snowflakeは、顧客がAIを簡単に使えるように今後も5つの面を強化していく」と述べ、「AI Data Cloudを使ってどのようなAIアプリが誕生するのかを楽しみにしている」と会場に呼びかけた。