NTTドコモとSpace Compassは6月3日、エアバス・ディフェンス&スペース(以下、エアバス)および子会社のAALTO HAPS(以下、AALTO)と、HAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォーム)の早期商用化を目的とした資本業務提携に合意したことを発表した。日本においては2026年のHAPSサービス提供開始を目指す。
今回の資本業務提携はNTTドコモとSpace Compassが主導し、みずほ銀行や日本政策投資銀行などが参画するコンソーシアムであるHAPS JAPANを通じて、AALTOに対し最大1億ドルを出資する。
HAPSの特長
HAPSは地上約20キロメートル上空の成層圏を数カ月間無着陸で飛行し、地上への通信および観測サービスを提供する無人飛行体。翼幅は約25メートル、総重量は75キログラムで、形状は旅客機というよりもグライダーに近い。
HAPSにより、通信環境が整っていない空、海上、山間部における端末との高速大容量・低遅延の直接通信が実現される。これにより、災害時における被災状況のリアルタイム観測や、送電線監視保守業務などにおける長期間の定点観測を高精細映像で提供するといった使い方が期待される
AALTOが製造および運用するHAPS「Zephyr(ゼファー)」は、2021年に18日間の連続飛行および成層圏からの電波伝搬実証に成功すると、2022年には64日間の連続飛行に成功している。2026年の商用提供開始に向け、24年~25年には国内フライトと通信の実証が行われる予定だ。
NTTドコモはこうした飛行・通信技術に加えて、自社が持つ地上ネットワークの専門知識と、エアバスの観測ソリューションを組み合わせることで、HAPSを用いた非地上ネットワークの構築を進めるという。
山間部や海上でもスマホ高速通信を実現
地上約20キロメートルを飛行するというHAPSの特長により、高速で低遅延な通信が可能となる。スマートフォンでも直接高速通信が行え、非地上ネットワークながら地上ネットワークと変わらない通信も期待できるとのことだ。
NTTドコモはHAPSによる通信を提供する場面について、山間部や海上など、地上ネットワークのインフラ敷設が困難なエリアでの通信提供を想定している。へき地や離島のほか、遭難救助や災害復旧、船舶、山間部の建設現場などで、HAPSを用いた社会課題の解決が期待できるという。
ところで、HAPSといえば以前からソフトバンクも開発に注力している。この点について、NTTドコモの執行役員でネットワーク部長を務める引馬章裕氏は「HAPSはまだ市場も小さく、現段階から競合して勝ち負けを決めるつもりはない。切磋琢磨しながらも協調して新しい市場を一緒に作っていけたら」とコメントしていた。
また、衛生コンステレーションサービス「Starlink(スターリンク)」がスマートフォンとの直接通信に対応開始することにも触れ、「そもそもHAPSとStarlinkは役割や能力が異なる。勝ち負けではなく、どのように使い分けるのかを考えていく」と説明した。