LINEヤフーは5月8日、2024年3月期の連結決算会見を開催した。2023年11月末の不正アクセスによる情報漏えい問題発覚後、正式な記者会見は今回が初めて。同会見に登壇した代表取締役社長 CEO(最高経営責任者)の出澤剛氏は、業績を一通り説明した後、情報漏えいの要因と主な再発防止策について説明を行った。

  • LINEヤフー 代表取締役社長 CEO(最高経営責任者) 出澤剛氏

    LINEヤフー 代表取締役社長 CEO(最高経営責任者) 出澤剛氏

売上高1兆8147億円、4期連続で過去最高

LINEヤフーの2024年3月期の連結決算は、売上高にあたる売上収益が前年比8%増の1兆8147億円で4期連続で過去最高を更新した。2022年10月に急成長を続けているPayPayを連結子会社化したことや、ZOZOグループの成長に伴うコマース事業の増収などが成長をけん引した。一方、PayPayの連結子会社化による企業結合に伴う再測定益が響き、営業利益は前年比34%減の2082億円、純利益は37%減の1132億円だった。

PayPayの登録ユーザーは6304万人を超え、連結取扱高は約12兆5000億円と「前年比で2兆円成長した」(出澤氏)。戦略事業の調整後EBITDAは115億円となり通期で初めて黒字となった。

韓国ネイバーへの開発委託を「ゼロ」に

報道陣からの注目を集めたのが、情報漏えいに関する再発防止策をどう見直したのかということだ。LINEヤフーは2023年11月27日、同社のシステムが第三者の攻撃を受け、LINEアプリの利用者情報など約44万件が流出した可能性があると発表(最終的には約52万件)。韓国ネイバーと一部システムを共通化していたことが原因の1つだった。

総務省は2024年2月14日、LINEヤフーに行政指導しネイバー側のシステムからの分離などを求めた。同社は4月1日に再発防止策を総務省に提出したが、対応が不十分として、総務省は4月16日に2度目の行政指導を行った。

  • LINEヤフー情報漏えい問題の時系列

    LINEヤフー情報漏えい問題の時系列

出澤氏は「ネイバー社との不必要な通信の遮断や認証基盤の分離など緊急性の高い対応2024年度中にすべて完了する予定。子会社とネイバー社とのネットワーク分離も2026年12月までに官僚する予定で、前倒しで進める」と説明した。関連費用として25年3月期に約150億円を計上する。

また同社は、システムやネットワーク運用だけでなく、サービス・事業領域においてもネイバーとの委託関係を終了させる方針を打ち出した。ウェブ検索開発検証における委託協業も終了する。事業領域ごとの計画は7月に公表される予定だ。

取締役2人が退任、PayPay連携も「見送り」

経営体制の見直しも図る。LINEヤフーは決算発表同日、代表取締役 CPO(最高製品責任者)の慎ジュンホ氏と、取締役 CSO(最高戦略責任者)の桶谷拓氏が6月の定時株主総会後に取締役を退任することも発表した。社外取締役の比率を43%から67%まで引き上げ、経営と執行の分離を進めることで、より一層ガバナンス強化を図るとのことだ。

  • LINEヤフーは経営体制も見直す

    LINEヤフーは経営体制も見直す

LINEとPayPayのアカウント連携時期も延期した。25年3月期に予定していた時期を未定とし、LINEヤフーのセキュリティ強化策を優先する。

出澤氏は「この度のセキュリティインシデントで、ユーザーや多くの関係者に多大なる迷惑をかけてしまったことを心からお詫び申し上げる。ユーザーに安心してサービスを利用してもらえる環境を作ることを全社の最優先課題とし、早急に取り組んでいく」と語った。