Oracleは4月18日、東京で「Oracle World Tour Tokyo 2024」を開催した。初来日となったCEOのSafra キャッツ氏は基調講演で、「早く動きすぎるリスクより、動かないことのリスクの方が大きい」と述べ、日本企業にクラウドに移行し、その上でAIなど新しい技術を使って革新を進めることを奨励した。

同社は同日、日本市場に10年間で80億ドル以上を投じることも発表し、キャッツ氏は急遽会見を行った。

  • 初来日となった米オラクル CEO サフラ・キャッツ氏

ゆっくり動くことはリスクになる時代

キャッツ氏はまず、世界の企業や政府などの顧客に会う立場から、現状を次のように語った。「堰を切ったように、世界中の企業が新しい技術を使おうとしている。コロナの後、企業はゆっくり動くことは早く動くことよりリスクであるということを学んだ」

そして、「誰もがモダンなシステムで、最高のツールを使い、顧客により良いサービスを提供し、サプライヤーとの取引を改善し、従業員との関係を改善しようとしている」と、キャッツ氏は続けた。

その上で、Oracleのアドバンテージは、「テクノロジースタックの全てのレベルで製品を持っていること」だという。

IaaSのOCI(Oracle Cloud Infrastructure)については、顧客は規模の大小に関係なく、世界中で同じサービスを利用できる。それだけでなく、専用リージョン「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer(DRCC)」、パートナーが提供する「Oracle Alloy」、MicrosoftとAWSとの提携により、「OCIをマルチクラウドの一部として利用することもできる」とキャッツ氏は説明した。

SaaSはOracle Fusion Cloud Applicationsとして、Financials、HCM、SCMなどを利用できるほか、NetSuiteも展開している。「必要なものだけを利用できる。すべてを利用する必要はない」と、キャッツ氏は付け加えた。このような水平方向への展開に加え、業界特化型の垂直方向のアプリケーションも用意している。

データベースはOracleのDNAであり、強みとする分野だが、ここでも「あらゆるレベルで競争している。AIなど新しい機能を取り入れ続けている」と、キャッツ氏は述べた。そして、「われわれはOCIを第2世代のクラウドとして開発してきた。先人の失敗から学び、セキュリティ、Autonomous Databaseに加わる自律機能などの自動化も実現している」と、同社のアドバンテージを強調した。

キャッツ氏が最後に触れたのがネットワークだ。OracleはRDMA(Remote Direct Memory Access)としてクラウド専用のネットワーク機能を構築しており、スピードに貢献しているという。

「処理に1分を要するワークロードを10秒で完了できるとすれば、同じ(1分の)料金で6つのワークロードを処理できる。より多くの作業を、より少ないコストで行える。これがOracle Cloudだ」(キャッツ氏)

Oracleの特徴はスピードとコスト、顧客サクセスも強化

顧客のAI活用支援については、「ハイパースケールのクラウドを利用することで、AIや生成AIに必要な技術をすぐに手に入れることができる」とキャッツ氏は述べた。

Oracleの特徴として、キャッツ氏は高速性とコストを強調した。AI関連の機能としては、データべースではベクトルデータベース向けなどの機能、SaaSではHCMを例に、人事がジョブディスクリプションの要件の作成を自動化するなどの機能が紹介された。これらを、企業はインフラを構築することなくクラウドで簡単に利用できる。

「Oracleはさまざまなレベルで生成AIを提供している。確立された企業であれ、スタートアップであれ、Oracleを選ぶ理由は、Oracleには機能があり、高速だからだ」とキャッツ氏は述べた。

加えて、キャッツ氏は顧客サポートの取り組みにも触れた。同氏はCEOとして 顧客が価値とインパクトのある成果を得られることを徹底してきたという。そのために、社内、パートナーにこのメッセージを浸透させてきた。

「Oracleが成功するたった一つの方法は、顧客が成功すること。あるいは、顧客の期待を上回るものを提供すること」とキャッツ氏。社内では、顧客が購入やサービスを受ける体験を改善するようにプロセスを再調整し、導入前から導入後まで顧客をサポートする「Customer Success」組織を立ち上げたと紹介した。

顧客の成功を支援するためデータセンターを構築する

今後の展望として、キャッツ氏は、創業者で現在もCTOを務めるLarry Ellison氏が米国時間で4月17日にTIME紙の最も影響力のある100人「TIME 100」に選ばれたことに触れ、「素晴らしいイノベーター」と称賛した。

Ellison氏をはじめとした技術チームによるテクノロジー面の強化は今後も続く。「Autonomous Databaseはもっと自律的になる」とキャッツ氏は語った。2021年のCerner買収により本格参入しているヘルスケア分野における機能やサービスの開発も続ける。

「今後もOracleから膨大なイノベーションが出てくる。我々はパートナーであるNRIやMicrosoftと提携しており、今日は富士通との戦略提携を発表した。今後もパートナーを増やしていく」とキャッツ氏。日本では、顧客の生成AIの活用などのニーズの高まりを受け、80億ドル以上を投資すると述べた。

最後にキャッツ氏は、「Oracleは常時マルチクラウドという考えを持っている。顧客にフォーカスして顧客が求める選択肢を提供することで、顧客の成功を支援できる。そのために機能を提供し、世界にデータセンターを構築して支援を続けていく」と述べた。