第4次AIブームとも呼ばれる現在の生成AIの隆盛。これまでに何度も訪れては消えたAIブームと違い、生成AIは産業革命やIT革命に並ぶ革新をもたらす可能性がある。すでに企業は業務やビジネスにおける生成AI活用を模索しており、今後さまざまな動きが出てくるだろう。
一方で、企業における生成AI活用は、ただプロンプトを打ち込めば成果が上がるわけではない。生成AIにまつわるリスクを排除し、本当に効果のある活用を実現するにはどうすれば良いのか。
2月7日~9日に開催された「TECH+フォーラム 2024 Feb. AI Frontline」に、生成AIのコンサルティングや開発を行うRidge-i 代表取締役社長の柳原尚史氏が登壇。最新の生成AI活用事例とリスクについて語った。
戦略策定から運用まで一気通貫で担うAIテクノロジー企業
Ridge-iは2016年に創業したAIに関するテクノロジー企業だ。代表を務める柳原氏は、NTTコミュニケーションズで新規事業企画に携わった後、HSBC、大和証券、ブラックロックなどの金融機関で高頻度取引、アルゴリズム取引、証券リスク管理システムなどの構築を経験し、同社を立ち上げた。
同社が展開するのはカスタムAIソリューション事業だ。中でも主力となるのが、AI活用コンサルティング・AI開発サービスであり、DXやAI活用のアドバイザリー、AIシステム提案、開発、運用保守などを行っている。
そんなRidge-iの強みは、AIやDXをどう使っていくかという戦略策定から要件定義、それに基づいたAI開発や運用保守まで一気通貫で行えることだと柳原氏は話す。
具体的なソリューションとしては、例えば荏原環境プラントのごみ焼却炉の自動操業がある。ごみを撮影することで、ごみの種類をAIが自動判別。ごみの撹拌から焼却炉へ投入するクレーンにおいて、自動運転割合を16%から89%まで引き上げるなど大きな実績を上げている。
また、NHKとの取り組みでは、白黒映像をAIで着色しカラー化することにも成功。本来は人の手で彩色していたが、Ridge-iのソリューションにより作業工数が60%削減したという。
生成AI活用で大きな成果を得るには
創業から7年で多くの実績を上げてきたRidge-iだが、近年注力しているのはやはり生成AIである。生成AIを使ったソリューションの開発・提供に加え、LLMの開発やファインチューニングに取り組むほか、生成AIの活用コンサルティングにも力を入れているという。
むろん、生成AIをただ使うだけなら外部の手を借りず、各企業が自力で行うことも可能だ。ただ、「そのまま利用するのはセキュリティの観点から敬遠する企業が多い」と柳原氏は話す。
確かに、生成AIで他社と差別化できるような成果を出すには、社外はもちろん社内データの活用も不可欠だ。機密情報の漏洩を危惧するのは自然なことだろう。そうしたリスクを回避しつつ、生成AIの恩恵を得るには相応の工夫が必要となる。
例えば、Ridge-iにおける生成AI関連サービスでは、「ミドルウェア+GPT利用」、「LLMファインチューニング」、「独自モデル」という3つの活用パターンが用意されている。
「ミドルウェア+GPT利用」や「LLMファインチューニング」では、Embeddingを使った外部情報検索・入力・出力内容の制御を行い、社内の重要なデータを活用しながら、GPTの柔軟な自然言語作成能力を利用できる。さらに、APIと連携することにより業務オペレーションと接続する設計も可能だという。
企業はセキュリティリスクを抑えつつ、自社にとってインパクトのある生成AI活用を実現する方法を模索することが必要なのだ。