TikTokが米国でのサービス禁止の動きに反対するようユーザーに呼びかけたキャンペーンをきっかけに、米立法府において中国発のショート動画投稿アプリ「TikTok」を脅威と見なす声がかつてないほど高まっている。
米下院議会は3月13日(現地時間)、対立する国の管理下にあるアプリケーションによる脅威から米国の国家安全保障を守る法案を可決した。賛成352、反対65(可決には3分の2の賛成が必要)だった。この法案ではTikTokが争点になっており、上院でも可決されれば、米国におけるTikTokの提供が禁じられる可能性がある。
米国でTikTokを禁止する動きが広まるのは今回が初めてではなく、2020年に当時のトランプ大統領が、米国民の個人データが中国に流出する懸念があるとして、ByteDance(TikTokを開発)との取り引きを45日後に禁じる大統領令を発布した。しかし、この命令は法的根拠が弱いとしてワシントンDCの連邦地裁がTikTokの要請による一時差し止めを認めた結果、バイデン政権に移行後、取り引き禁止令は撤回された。その後も、情報流出対策やソーシャルメディアが未成年に与える悪影響への対策からTikTokを制限する議論は続いたものの、バイデン政権下ではTikTokを利用するビジネスやクリエイターによる禁止反対の活動の方が盛んであった。
そうした状況が、3月7日にTikTokが実施した反対呼びかけキャンペーンにより大きく変わった。TikTokはアプリの通知機能を通じて、ユーザーに「TikTokが米国で禁止されようとしています。今すぐあなたの地域の議員に連絡してください」と呼びかけ、そのメッセージを受けたユーザーからの苦情や問い合わせが議員や議会に殺到し、電話回線が逼迫した。ユーザーが郵便番号を入力すると、その地域の議員や議会の連絡先につながる仕組みとなっていた。
TikTokのキャンペーンは、議員にソーシャルメディアの影響力に対する懸念を広げる結果になり、7日の下院エネルギー・商業委員会では全議員が賛成。続く下院議会でも賛成84%で可決された。バイデン大統領は、議会を通過すれば、法案に署名する意向を示している。成立すれば、ByteDanceが米国または米国にとって安全保障上の懸念のない国の企業にTikTokを売却しない限り、米国でTikTokの提供は禁じられることになる。
一方、次期大統領選における共和党の有力候補になっているトランプ氏は、TikTokを禁止してもFacebookにユーザーが移るだけで、ソーシャルメディアのリスクという点で改善にならないとコメント。この発言の後、Meta株は下落した。