リクルートマネジメントソリューションズは3月4日、一般社員・管理職552名に対して実施した「企業における『リスキリング』『学び直し』の推進に関する実態調査【個人調査編】」の結果を公表した。過去1年で仕事に関する知識・スキルを学んだ人は約9割で、理由は必要性からが7~8割と最も多く、興味や楽しさから学んだ人も6~7割程度いたことが明らかになった。

  • 仕事に関する新しい知識・スキル習得の必要性と1年間の習得機会

    仕事に関する新しい知識・スキル習得の必要性と1年間の習得機会

新しい知識やスキル習得の必要性

今回、(A)現在の仕事に直結するもの、(B)過去から現在までの専門性や得意領域を強化するためのもの、(C)将来に向けて自社内での新しい仕事を担う・創造するためのもの、(D)大きなキャリアチェンジにつながるもの、という4種類の仕事に関する新しい知識・スキルの習得機会について調査した。

その結果、新しい知識やスキル習得の必要性について、必要であると回答したのは、いずれも6~7割程度が必要と認識していた。過去1年の習得機会については、「現在携わっている仕事に直結する知識やスキル」の選択率が最も高く、「大いにあった」~「あまりなかった」との回答は83.7%、「全くなかった」とした回答は16.3%のみであった。

A、B、C、Dの順に習得機会があったとする選択率は低下するが、もっとも選択率が低い「D.別の仕事や働き方へのキャリアチェンジにつながる知識やスキル」においても約7割は何らかの新しい知識・スキルの習得機会をもっていた。また、9割近くがA、B、C、Dのいずれか1つ以上の新しい知識・スキルの習得機会があり、4つとも必要性が習得機会を上回っているが、そのギャップはA、B、C、Dの順に大きいという。

学んだ理由を尋ねると、「業務上で必要だったから」(78.0%)、「将来、いろいろなことに役立つから」(74.3%)、「将来の仕事に役立つから」(72.5%)、「自分のキャリア形成につながるから」(70.5%)であった。

また、「その内容が知りたいから」(72.0%)、「新しいことを学ぶのが楽しいから」(64.2%)といった興味や楽しさから学んだ人は6~7割程度、「学んでおかないと不安だから」(63.6%)などの不安、「学ぶことに使える時間ができたから」「偶然、学ぶ機会が得られたから」(いずれも55.5%)などの環境変化や機会提供が学ぶきっかけとなった人も半数を超える。

  • 仕事に関する知識・スキル習得の理由

    仕事に関する知識・スキル習得の理由

自身の成長や学びの役に立っている割合は?

次に、過去1年の仕事に関する新しい知識・スキルの習得において、「学びあり群」と「学びなし群」に分け、自社の知識・スキル習得支援の制度や仕組みとして導入されているもの、役立っているものの選択率を確認したところ、すべての制度や仕組みにおいて導入割合、自身の成長や学びの役に立っている割合は、「学びあり群」が「学びなし群」を統計的に有意に上回った。2群間の得点差が大きかったのは、導入割合、役に立っている割合ともに「教育訓練プログラムの提供」、「費用面での支援」であった。

  • 知識・スキル習得支援の制度や仕組み(過去1年の学び程度別)

    知識・スキル習得支援の制度や仕組み(過去1年の学び程度別)

また、社内キャリアや働き方における個人の選択を重視する「個人選択型HRM」の導入割合を「学びあり群」と「学びなし群」に分けて確認した。選択肢として挙げたうち9つの施策において、導入割合、自身の成長や学びの役に立っている割合は、「学びあり群」が「学びなし群」を統計的に上回った。

2群間の得点差が大きかったのは「面談などで上司にキャリアについて相談できる制度」「テレワークなど、働く場所を柔軟に選べる制度」「希望する研修や講習を受講できる制度」「社内公募など、他部署へ手挙げで異動を希望する制度」であった。

  • 個人選択型HRMの導入状況(過去1年の学び程度別)

    個人選択型HRMの導入状況(過去1年の学び程度別)

会社からのメッセージ有無

所属企業において、従業員に新しい知識・スキルを身に着けることを期待するメッセージはどの程度発信されているか尋ねると、約7割(78.3%)が新しい知識・スキル習得に関する会社から従業員への期待を感じているが、具体的なメッセージの発信は約4割(41.8%)にとどまった。

  • 会社からの新しい知識・スキル習得を期待するメッセージの発信

    会社からの新しい知識・スキル習得を期待するメッセージの発信

従業員が新しい知識・スキルを身に着けることについて、会社からどのようなメッセージが発信されているか聞くと、「会社が今後起こりうる変化に備えるために必要なこと」(51.0%)、「自社が新しい事業や市場を創造するために必要なこと」(42.8%)の選択率が高く、「自社のデジタル・トランスフォーメーションのために必要なこと」(37.6%)、「既存事業を維持するために避けられないこと」(30.9%)、「個人のキャリアの可能性を広げる手段となるもの」(27.8%)がそれに続くいた。

  • メッセージの内容

    メッセージの内容

会社からの新しい知識・スキル習得を期待するメッセージの発信の回答別に、過去1年の仕事に関する新しい知識・スキル習得の傾向をみると、会社からの期待メッセージを受け取っている方がいずれの知識・スキルにおいても学んでいた。

  • 会社からの具体的な期待メッセージを受け取っている方が、新しい知識・スキルを学んでいる

    会社からの具体的な期待メッセージを受け取っている方が、新しい知識・スキルを学んでいる

11種類の知識・スキルを挙げ、「会社主導の学び」と「個人主導の学び」としてあてはまるものを聞くと、その両方の方法を選択した人は一部に過ぎず、ほとんどはどちらかを選択した。仕事に直結する職務遂行・事業推進場面でも個人主導を選んでいたり、キャリア形成でも会社主導を選んでいたりと、知識・スキルの種類によって方法は一様ではなかった。

  • 学んだことがある知識・スキルの種類

    学んだことがある知識・スキルの種類