日立製作所(日立)は3月1日、東京都向けに、災害発生直後の情報空白時間における情報収集を目的とした高所カメラ被害情報収集システムを開発し、同日より本格稼働を開始することを発表した。
高所カメラ被害情報収集システムの概要
東京都はこれまでは発災直後に限られた人員が手動で高所カメラを操作しながら被害を確認して被災地を特定していたため、都内全域の詳細な情報を漏れなく継続的に収集・把握し、対応に結び付けることに時間と労力を要していたという。こうした背景を受け、東京都が進める「未来の東京version up 2022」戦略の一環として、日立は自社の映像解析技術とノウハウを用いて同システムを開発した。
このシステムは、東京都内で大規模な地震などが発生した場合に、東京都の防災担当職員が利用するもの。具体的には、都庁などに設置されている高所カメラがそれぞれの高所カメラの視認範囲を自動で撮影し、その画像をリアルタイムで解析するAIが火災・煙・建物の倒壊を自動検知するとともに、発災地点を特定し一覧や地図上で分かりやすく表示することで、発災初動期から自動で被害情報を収集可能となる。発災地点が木造家屋の密集地帯である木密地域であるかなども表示されるため、職員が対応の優先度を検討する際にも役立つとしている。
情報収集や状況把握にかかる時間を短縮
今回の本格稼働に先立ち実施した実証では、従来の人手による発災直後の情報収集や状況把握にかかる時間を短縮できることが確認されたという。このシステムにより、都の職員は被害状況を迅速かつ的確に把握できるようになり、都民への情報発信や警察・消防・自衛隊との連携など、東京都の災害対応を高度化できるとしている。
日立は今後、同システムと連携するカメラの台数を追加し、東京都のより広い範囲の被害を解析・検知可能にするとともに、AIの追加学習などアップデートを進め、さらなる発災時の迅速な初動対応および被害状況の継続的な把握の実現をめざす。また、このシステムに活用した独自AIや日立のLumadaで展開される各種ソリューション・技術を用いて、今後も自治体や警察・消防機関での災害対応のDX推進を支援し、二次災害の抑止や救護活動の迅速化、インフラの早期復旧などに貢献していくとしている。