イーセットジャパン(ESET)とキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は2月14日、都内で事業戦略発表会を開催した。発表会にはESET 最高経営責任者のリチャード・マルコ氏が出席し、プレゼンテーションを行った。

冒頭、キヤノンMJ 取締役上席執行役員の蛭川初巳氏が挨拶に立ち「2003年からESETの国内総販売代理店としてともに製品、サービス、サポートを提供している。ESETはマルウェア対策において高い技術力に、キヤノンMJグループの提案力とサポート力を掛け合わせてパートナーシップを強化し、今後も高い価値をお客さまに提供していきたいと考えている」と語った。

  • キヤノンMJ 取締役上席執行役員の蛭川初巳氏

    キヤノンMJ 取締役上席執行役員の蛭川初巳氏

統合サイバーセキュリティXDR「ESET PROTECT」

まず、マルコ氏はビジネス概況について触れた。グローバル全体の売上高は6億8570ユーロとなり、現在では世界23カ所にオフィス、同12カ所にR&D(研究開発センター)を構え、従業員数2300人超を抱えている。同氏は「世界中にオフィス、R&Dセンターを展開しているため、最新のトレンドをいち早く捉えるとともに、インテリジェントレポートを公開している」と述べた。

  • ESET 最高経営責任者のリチャード・マルコ氏

    ESET 最高経営責任者のリチャード・マルコ氏

昨今のビジネスにおける課題として、同氏は専門知識・スキルを持つIT人材不足やサイバーセキュリティへの投資不足、古いハードウェア、セキュリティソリューションの複雑化を挙げた。

そのような状況において、同社は日本における2022年のエンドポイントセキュリティ市場のシェア7%を握り、コンシューマセグメントで4位、SMBセグメントで3位に付けており、 同社の国内におけるクラウド版ESET PROTECTソリューションの売上比率は25%弱となっている。

こうした事業環境を受けて、同社では統合サイバーセキュリティXDR「ESET PROTECT」のプラットフォームを中心にマネージド検知・対応の「ESET MDR」といったセキュリティサービス、複雑化するセキュリティ製品の運用導入支援やテクニカルサポートを行うプロフェッショナルサービスで拡販を進めていく。

マルコ氏は「解析技術の『Live Guard』と早期警告システム『LiveGrid』で1日あたり平均75万の検体をユーザーから受信し、うち50万が悪意のあるファイルだ。また、収集・評価するメタデータ数は1日あたり平均6000万となり、1日に確認するURLデータと対かテレメトリデータの総量は2.5TB(テラバイト)に達する。LiveGuardはAIで強化されたクラウドベースの保護レイヤとなり、未知の脅威に特化して設計している。収集したデータで疑わしいものは追跡するほか、レポート作成などにも利用している」と力を込めた。

ESET PROTECTは利用可能な機能別で「Entry」「Advanced」「Complete」「Elite」「MDR」の5つの提供形態となっている。

  • ESET PROTECTのラインアップ

    ESET PROTECTのラインアップ

同ソリューションについてマルコ氏は「使いやすく、一画面で一括管理を可能とし、AI駆動だ。また、マルチテナントであるとともにサードパーティセンサが連携でき、サービス提供のためのプラットフォームとなっている」と自信をのぞかせた。

ソリューション提案型体制と運用サービス提供体制を強化

続いて、キヤノンMJ セキュリティソリューション企画本部 本部長の輿水直貴氏が国内における販売戦略について説明した。

輿水氏は「国内におけるEPP(マルウェア対策)市場では20年連続でシェア2位であり、EDR(XDR)市場は後発ではあるが、体制を整備したことでユーザー数は増加している。EDRは大企業から導入が進み、中堅企業もニーズが拡大、導入が増えており、2027年には市場規模でマルウェア対策を超える見込みだ。現状のEDR市場は先行の専業ベンダーが高いシェアを持っているとはいえ、EPPとは対象とする脅威が異なるため、実績を有したESETのEPPが必要であり、XDRを組み合わせればエンドポイントを包括的に保護できる」と話した。

  • キヤノンMJ セキュリティソリューション企画本部 本部長の輿水直貴氏

    キヤノンMJ セキュリティソリューション企画本部 本部長の輿水直貴氏

ESET PROTECT MDRは、キヤノンMJグループの技術者がESETが連携で対応し、MDRサービスとしてチューニングや疑わしき挙動の調査・解析、脅威モニタリング・ハンティングなど、プレミアムサポートサービスとしてEPPとXDRのテクニカルサポート、XDRエージェントの導入支援とをはじめ、サポートのみならず運用サービスも提供している。

  • ESET PROTECT MDRにおけるESETとキヤノンMJの連携

    ESET PROTECT MDRにおけるESETとキヤノンMJの連携

輿水氏は「MDRは幅広い層のお客さまが必要とするソリューション。多くのお客さまがセキュリティ対策レベルを高めるために適切に導入・利用してもらうことを目指す」と強調した。

そのため、キヤノンMJでは「ソリューション提案型体制の強化」と「運用サービス提供体制の強化」の2つの戦略を進めていく。

ソリューション提案型体制の現状は同社グループのプレセールスとプレセールスSEが対応しているが、販売パートナー支援とSIパートナーとの連携をそれぞれ強化する。

運用サービス提供体制の強化では、EPP技術者の教育、サービス技術者を採用など、高いレベルのセキュリティ運用サービスを提供するための投資を行う。

  • 日本国内におけり事業戦略の概要

    日本国内におけり事業戦略の概要

最後に輿水氏は「国内の総販売代理店として20年間、ESETと連携しながらお客さまに対して、安心かつ信頼性を備えたソリューションを提供してきた。今後、さらに進化させたソリューションを提供していく」と締めくくった。