「DXがなかなか軌道に乗らない」というのはよくある話だ。ベネッセグループでも当初、DXの導入・推進が難航したという。1月22日~25日に開催された「TECH+働きがい改革 EXPO 2024 Jan. 働きがいのある企業になるために今すべきこと」にベネッセホールディングス Digital Innovation Partners 副本部長の水上宙士氏が登壇。同社におけるDX推進体制の立て直しや、AI活用などについて話した。

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全社一律では難航、2軸でDXを進める

ベネッセがDXに着手したのは2018年のことだ。同社は「よく生きる」を企業理念に掲げ、教育と介護をメインに、妊娠・出産期にある親、幼児、小・中学生と高校生、社会人、シニアや、教育機関などさまざまな層に向けたビジネスを展開している。

  • 多岐にわたるベネッセグループの事業展開

ターゲットやビジネスモデルが異なる事業で構成されるからこそ、当初DXは難航した。水上氏は「DX推進における課題感が異なるのに、全社一律的にDXを進めるかたちでやってしまっていた」と振り返る。

その後立ち上がったのが、現在水上氏が副本部長を務めるDigital Innovation Partnersだ。ベネッセグループにおいて横断的にDXを推進する部門という位置付けだという。

2020年の立て直し時、DX戦略を2つの軸で進めていくことにした。1つは「事業フェーズに合わせたDX推進」、もう1つは「組織のDX能力向上」だ。

「両方を同時平行的に進めることでスパイラルアップさせて、ベネッセグループの事業変革を加速させる」と水上氏はその狙いを説明する。

事業フェーズにあわせ、3ステップに分解

事業フェーズに合わせたDX推進とは、DXを「デジタルシフト」「インテグレーション」「ディスラプション」の3ステップに分解し、それぞれの事業のDXを進めるというものだ。

「デジタルシフト」は既存サービスのデジタル化である。水上氏が例として紹介したのが、「進研ゼミ」の添削サービス「赤ペン先生」だ。それまでは答案の受領・返却は郵送で対応しており、返却までに最長2週間を要した。顧客(学生)には手間と負担がかかっており、それが答案を提出しない理由にもなっていた。これをタブレットで提出できるようにすることで、返却期間が大幅に短縮された。また、取り組み状況を保護者がスマホで確認できるようにした。これにより、ユーザーの学習履歴がデジタル上で蓄積されることで、個別最適化された学習カリキュラムも提供できるようになった。

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