DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で、データを効率よく利用できる仕組みを構築することが求められている。とはいえ、簡単なことではない。どうすれば、すべての従業員が必要なデータを必要な時に利用することを実現できるのだろうか。

データ仮想化プラットフォームを提供する米Denodo Technologies Senior VP Salesのリチャード・ウォーカー氏とリージョナル・バイスプレジデント&ジャパン・ゼネラルマネージャー 中山尚美氏に話を聞いた。

  • 左から、米Denodo Technologies Senior VP Salesのリチャード・ウォーカー氏、リージョナル・バイスプレジデント&ジャパン・ゼネラルマネージャー 中山尚美氏

今、求められている新たなデータアーキテクチャ

ウォーカー氏は、「データは今までIT部門に対し提供されていたが、AIドリブンな世界の広がりにより、すべてのビジネスユーザーに提供することが求められている。そこで必要となるのが新しいデータアーキテクチャだ」と語った。

新しいデータアーキテクチャでは、ビジネスユーザーが必要な時に必要なデータが利用することを可能にする。ウォーカー氏は、新しいデータアーキテクチャの要素として、以下の5点を挙げた。

  • すべてのユーザーのための単一のアクセスポイント
  • ビジネス用語で提供されるデータ
  • ビジネススピードに沿って提供されるデータ
  • データガバナンスとコンプライアンスに対応
  • ITがボトルネックではなく促進力となる

「今後、ビジネスユーザーが理解できる言語でデータを提供すること、リアルタイムでデータをデリバリーすることが必要。これまではコンパイルを行ってからデータをデリバリーしていたので、ユーザーにデータが届くまでに数カ月かかっていた。しかし、新しいデータアーキテクチャではデータが生成されると、瞬時で提供される。このスピード性はITがイネーブラーになることにも関係している。新しいデータアーキテクチャではすべてのユーザーが必要な時に必要なデータを提供できるからだ」

データアーキテクチャを補完する論理データ管理

続いて、ウォーカー氏はデータアーキテクチャを補完する重要なテクノロジーとして、AIドリブンな論理データ管理を紹介した。「論理データ管理」とは、データ仮想化技術を活用して、分散しているデータやシステムをそのままの状態で論理的に統合することを意味する。データ仮想化はデータレイクやデータウェアハウスなどのすべてのデータソースを包括する基盤となる。

中山氏は、「データ活用が進めば進むほど、データを物理的に1カ所に集めることは困難になってくることから、論理的なデータアーキテクチャが必要となる」と指摘する。

論理的なデータアーキテクチャにより、データの物理的に複製することなく論理的にデータを統合することで、「速くかつ正確にビジネスに適応する柔軟性」「全社的なガバナンスとセキュリティを容易に実現」「ITコストの最適化」というメリットが得られるという。

ガートナーが提供しているデータ分析のためのアーキテクチャにも、データ仮想化が組み込まれている。ウォーカー氏は、「OLAPやデータウェアハウスといった静的コンポーネントはインテリジェンスを備えておらず、システムをまたぐ形で学習できない。データ仮想化はデータの出所を認識し、それに基づいてパフォーマンスを最適化できる」と話す。

  • ガートナーが提供するデータ分析のための論理アーキテクチャ

さらに、ウォーカー氏は同社が提供するデータアーキテクチャの強みとして、AIドリブンであることを強調する。同社のデータプラットフォームでは、AIや機械学習がユーザーに最適なデータセットを推奨し、パフォーマンスを最適化して、コストを削減するためにクラウドEgressを活用するという。加えて、LLMにフィードするコンテキストをまとめて、タスクを自動化する。

デジタルサプライチェーン構築で得たメリットとは

ウォーカー氏は、同社のプラットフォームによってインフラの最適化を図った企業として、世界第3位のEMS&ODMメーカーを紹介した。この企業は17万2000人の従業委、4000人のデザイナーとエンジニア、1万6000のサプライヤーを擁しており、「インフラの断片化」「複雑なデータ活用プロセス」「事業の不連続性」といった課題を抱えていた。

こうした課題を解決するため、論理的にデータを組み立てる形でアーキテクチャを構築し、リアルタイムでサプライチェーンを可視化できることを実現した。

加えて、すべてのユーザーが一貫した形でツールを使えるようになり、スピードを手に入れたという。ウォーカー氏は、IT部門にもたらしたメリットとして、「ETLを7割削減」「ハードとソフトの数、レプリケートするデータの削減」「一元管理の実現によるセキュリティの強化」を挙げた。

ウォーカー氏は、「インテリジェンスを活用することで、データを学習し、生産性とコンプライアンスを確保できる。データを自在に利用できる未来は始まっている」と語っていた。