セーフィーは1月30日、LTE搭載クラウドカメラ「Safie GO」シリーズの最新モデル「Safie GO 360」を発表した。発表会では製品のコンセプトムービーのお披露目や製品紹介のほか、「大手建設会社とハウスメーカーと考えるカメラとデジタルツインが創る現場の今と未来」と題したパネルディスカッションが行われた。

デジタルツイン実装の入り口となる360度カメラ搭載モデル

登壇したセーフィー 営業本部 第2ビジネスユニット部長の渡部郁巴氏は建設業の2024年問題として、人手不足や、4月からの働き方改革関連法適用による労働時間縮小があると述べた。一方で、アナログ規制の緩和や、大阪万博、リニア中央新幹線の建設といった大型工事による建設業の需要拡大といったポジティブな話題もある。このような中、同社は映像データを軸としたデジタルツインを実現し、人々のスムーズな意思決定が進んでいく未来の実現を目指しているという。

「デジタルツイン実装の入り口となる製品」だと渡部氏が紹介したのが、今回発表されたSafie GO 360だ。360度カメラを搭載し、死角がないこの製品であれば、従来に比べ、より広範囲の現場確認が可能になる。画像はビューワーに表示されていない部分も録画されており、ダッシュボードでは見たい場所を複数同時に見ることもできる。

  • Safie GO 360のイメージ画像

2024年問題が建設現場に与える影響とは

パネルディスカッションに登壇したのはアイダ設計 建設本部 部長の堀江久幸氏と、清水建設 生産技術本部 生産技術開発センター デジタルマネジメントグループ 主査の大垣博氏、同 土木東京支店 千葉土木営業所 外環京葉Gランプ作業所 工務主任の石﨑裕大氏だ。モデレーターは渡部氏が務めた。

セーフィーとの出会いと導入のきっかけについて聞かれた堀江氏は「BCP対策用カメラを探しており、7社の製品を検討した上で、クラウドで見られる点と管理画面の見やすさが決め手になり、導入を決めた」と答えた。大垣氏、石﨑氏が所属する清水建設ではセーフィーのカメラが全社標準アイテムとして展開されているそうだ。

  • アイダ設計 建設本部 部長の堀江久幸氏

今、現場で直面している課題として堀江氏、大垣氏が挙げたのは2024年問題である。ハウスメーカーであるアイダ設計の場合、特に戸建て住宅の現場監督は電話でのやり取りも多く、拘束時間も長いといった課題がある。すでに数年前から工数削減や業務効率化には取り組んでいるが、「人を増やすだけでは限界があるので、アナログ規制の緩和には期待をしている」と堀江氏は話す。

堀江氏のコメントを受け、大垣氏も「人手不足解消について、セーフィーに期待しているところが大きい」と続けた。清水建設が担う超高層ビルの現場では現地確認が必要な場合も多いが、やみくもに現場を移動しても、無駄な作業になってしまう。そこで、あらかじめカメラで撮影した映像データで“現場に出向くべきタイミングかどうか”を判断することで、タイムロスのない巡回ができるという。

石﨑氏は「人手だけでなく、技能不足も課題」だと語る。現場には若い技術者が増えているが、やはり熟練の技術者と比べ、技能が不足している部分もある。そこで、カメラで撮影した映像データから熟練の技術者の動きを切り出し、教育に使うことで、技術の伝達の標準化が可能になるのだ。

360度カメラにより、現場の効率化、省力化が実現

「360度カメラがどのような課題を解決するのか」という質問に対し、大垣氏はこれまで自社の現場管理に360度カメラを導入したらどうなるか、他社製品で実証実験を何度か行ったことを明かした。撮り逃しがないというメリットがあるものの、配信までの手順が多い、停電後の自動復旧ができない、熱暴走対策が不十分、多数の機材が必要で接続が複雑、ネットワーク負荷が大きいといった課題がいくつか見つかったため、大垣氏からセーフィーへ「360度見られるような製品をお願いできないか」と要望を出したという。これが、Safie GO 360の誕生につながった。

  • 清水建設 生産技術本部 生産技術開発センター デジタルマネジメントグループ 主査の大垣博氏

では実際に、Safie GO 360を導入してどのような変化が生まれたのか。堀江氏は従来のカメラの問題点について、全体を映すためには複数台の設置が必要だったことや、かなり遠くから撮影をして全体を映した場合、画質が悪くなり、おおよその雰囲気は掴めるものの、仔細が見づらかったことなどを挙げた。Safie GO 360を設置し、その画像を見た際には「ここまでクリアに見えるのか」と衝撃を受けたそうだ。

また、従来、手動で見たい場所を切り替えられる「Safie GO PTZ」を使用していたという石﨑氏は、ある人が見たい場所の方向にカメラを向けてしまうと、別の人が見たい場所の映像を見られなくなってしまうという課題があったと話す。そのため複数台のカメラを設置する必要があったが、Safie GO 360であれば、「1台でそれぞれが見たい場所を見られるのが良い」と感想を述べた。

  • 清水建設 土木東京支店 千葉土木営業所 外環京葉Gランプ作業所 工務主任の石﨑裕大氏

さらなる活用で、未来の建設現場を目指す

最後に渡部氏から今後取り組みたいことや、建設現場の未来について質問が投げ掛けられた。堀江氏は納品された部材のサイズ確認や、ドローンでの遠隔巡視のほか、現場管理アプリと連動により、不安全行動をAIで認識し、管理者に通知を出すといったことができるのではと述べた。また、戸建て住宅の建築開始から完成までを動画撮影してタイムラプス動画にし、顧客にプレゼントするというアイデアも飛び出した。

大垣氏は、清水建設が掲げるデジタルゼネコンとしての3つのコンセプトを示しつつ、現場の複数のカメラから映像を取得し、デジタルツインを自動生成、遠隔から現場全体の施工状況をリアルタイムに場所別に把握できるような世界観を実現したいと語った。

また、石﨑氏はSafie GO 360と、清水建設で標準採用している建設現場管理ソフトウエア「OpenSpace」との連携を試行しているという。これにより、さらにリアルタイム性を向上し、よりスムーズに現場の状況を把握できるような省力化、高度化を目指すと話した。