横河電機では、多様な社員が活躍でき、自律的に挑戦できる環境を整えることを目的として2015年に働き方改革推進委員会を発足し、働きがいの変革に取り組んでいる。1月22日~25日に開催された「TECH+働きがい改革EXPO 2024 Jan. 働きがいのある企業になるために今すべきこと」に、同社 人財総務本部 国内人財統括部 部長の上村敬司氏が登壇。横河電機が働き方変革を出発点として取り組んでいる働きがい改革について解説した。

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2015年から積極的にテレワークを推進

講演冒頭で上村氏は、横河電機の働き方改革推進委員会の取り組みは、時間や場所に捉われない働き方、柔軟性の高い働き方、そして社員のセーフティネットといった観点から働く環境を整備しようとするものであると説明した。その中で、楽しくメリハリのある働き方を推進するために重視してきた施策の1つがテレワークの実施だ。同社では2015年にテレワークのトライアルを実施し、翌年から在宅勤務制度を導入するなど、コロナ禍以前からテレワークの推進に取り組んできた。

テレワーク導入の最初のトライアルでは希望者を募り、最低限の制限だけを設けて実施した。当時の参加者は毎月30人ほどだったが、テレワーク利用月間を設ける利用促進キャンペーンなどをし、積極的にプロモーションを行うことでテレワークの定着を目指してきたという。テレワーク制度へ改定されたのが2018年で、そのときに働く場所の制約もなくした。テレワークの拡大に伴い、書類などのペーパーレス化も必要になるが、これを職場任せにせず全社プロジェクトとして推進。申請書類の電子化、紙書類の電子化/廃棄といった施策で環境面も整えた。

コロナ禍を機に制度を見直し、テレワークを拡大

こうしてテレワーク利用者を増加させてきたが、状況が大きく変わったのが新型コロナウイルス感染症の流行だ。2020年には、出社の必要がある者以外は原則テレワークとし、この段階で改めて制度を見直した。利用限度時間をなくし、さらに、当初は原則禁止だった深夜休日の利用も、所属長の承認があれば制限なく使えるようにし、時差のある海外との打ち合わせも自宅でできるようにした。

これらの制限の緩和のほか、光熱費負担分として1時間あたり20円、環境整備の補助として月1000円のテレワーク手当も支給、さらに通勤費も定期券代支給から実費支給に変えるなど、働き方の実態に合わせて制度を変えてきたという。ネットワーク環境も、以前は一度に2000人ほどしか使えなかったが、2020年6月に国内の全社員が同時にテレワーク可能になるよう増強するなど環境整備も進めた。現在ではテレワークでも出社と同様の環境で業務を行えるようになっている。

状況に応じて制度を見直していくことが重要

2020年4月の緊急事態宣言発令以降、横河電機単体では約7割の社員が毎日テレワークを実施していた。このタイミングで一気にテレワークを立ち上げられたのは、もともと在宅勤務制度があったことや、導入時のトライアルで得られたフィードバックを活かして制度を設計したこと、そして利用実態や状況に応じて制度をその都度見直してきたからだと上村氏は言う。

「時代に即した制度を検討していくことが重要だと考えています」(上村氏)

  • 横河電機における働き方変革の変遷

制度を随時見直していくには、テレワーク利用者の実態を把握する必要があるが、そのためにアンケートも実施している。例えば生産性についてのアンケートでは、テレワークで「生産性が下がった」と感じている社員は9%しかおらず、ほとんどが「変わらない」か、あるいは「上がっている」と感じていると回答している。一方で、ストレスチェックの結果からは、高ストレス者の割合が世代を問わず増加していることがわかった。通勤しないことで身体の活動量が低下し、ストレスにつながっていると考えられるため、健康増進施策の検討も始めた。具体的には、社内の診療センターが中心となり、アプリを活用して歩数を競うウォーキングイベントを実施するなど、「Let's Shine!」と名付けた取り組みを進めている。